松原和音 連載小説『学生だった』第14回をアップしましたぁ。フランスへの卒業旅行完結編です。今回もとても心地良いエクリチュールです。
わたしたちは女子大生とひとまとめに呼ばれてしまう存在。それ以上でも、それ以下でもない。けど、私たちのお互いの距離は、外国よりも遠いんだ。だって、私たちはこんなにもひとりぼっちだから。お互いが侵食し合うなんて、幸せな幻想でしかない。たまになにかを共有できればいい。感情と時間は流れていくものだから。それでも今、同じ場所にいるということは事実だ。卒業したら、私は私でしかなくなる。取り残されたのではなくて、自由になるのだ。
私は、自分のカメラを手に取った。ボタンひとつでレンズが開く。
「こっち見て」
ファインダーの中で、私たちは同じ方向を向いている。
松原和音『学生だった』
主人公のさやは、女子大に通っているという設定で、そこは息苦しい。しかし心地よくもある。男の世界は腕力や金力、政治力などでなんらかのヒエラルキーが形成されないと落ち着いたプチ社会になりませんが、女性たちの世界は違います。ジェンダーといった社会問題とはぜんぜん関係のない、ささやかですが、決定的な世界の本質を描くのが小説です。『学生だった』の女の子たちは、水の中で溺れる魚みたいだなぁ。
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