鶴山裕司 美術展時評 No.129『寺田政明・生誕111年展』始弘ギャラリー(東京南青山)をアップしましたぁ。東京南青山の始弘ギャラリーで開催されている『寺田政明・生誕111年展』の美術展時評です。寺田政明さんは戦前から戦後に東京池袋周辺に存在した池袋モンパルナスの中心人物でした。政明さんの親友が詩人の小熊秀雄で、彼も政明さんと並ぶモンパルナスの村長格。鶴山さんは池袋モンパルナスについて講演もなさっておりこのムーブメントの専門家ですね。絵画と詩人両方について書けるのは鶴山さんだけでしょうね。
鶴山さんは池袋モンパルナスの重要性について『この芸術家村が日本の〝洋画〟の光と闇を鮮やかに体現しているからである』と書いておられます。日本で〝洋画〟が生まれたのは明治維新からです。そこからモンパルナス全盛期の昭和10年までは67年。『この間に画家たちはあらゆる試行錯誤を重ねた』。モンパルナスの画家たちはダダやシュルに影響を受けましたが『それらは一時の流行風邪のようなものだった』『寺田政明、熊谷守一、長谷川利行、靉光、松本竣介、麻生三郎、古沢岩美らといった中心画家たちはやがて欧米芸術の影響を抜け出して日本独自の洋画を描き残していった。実在の人物や風景を丹念に描写しながら、それを洋画独自の抽象表現にまで高めた。〝具象抽象絵画〟の誕生である』と書いておられます。
『加えてモンパルナスの画家たちは太平洋戦争に翻弄された』『明治維新から太平洋戦争までの素晴らしい日本絵画の歩みと、それと相反する無理に無理を重ねた日本文化の歪みが集約されているのが池袋モンパルナスと呼ばれる一連の絵画動向である』ということですね。
展覧会期間中にはご子息で俳優の寺田農さんが在廊しておられます。是非足をお運びください。
■鶴山裕司 美術展時評 No.129『寺田政明・生誕111年展』始弘ギャラリー(東京南青山)■
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