一.電気グルーヴ
少々遠方、または休みの日が合わなかったりで、なかなか縁のない店にようやく行けるメドがついた。数日楽しみにして、いざ当日店の前に到着すると臨時休業。振り返れば、結構そのパターンが多い。年明け早々シケた話でなんともはや。
つい先日もこのパターンに遭遇。かねてよりチェックしていた野方の呑み屋に出かけてみたら、閉じたシャッターに「本日まで正月休み」のつれないメッセージ。駅から遠いバーの扉は頑丈に出来ている、なぜなら休みと知らずに来た客が腹いせに蹴りを入れるから。そんな話を思い出しつつ、リカバリー策を考えながら暫し散策。幸いにも土地勘はあるのですぐに方向転換、目指すはたこ焼き屋「H」。というのも少し前、立ち飲み屋で久々に会った友人より「あそこの旨かったよ」と報告を受けていた。たしか食べたことあるはずだけど記憶は曖昧。ならばとコンビニでビールを調達してから、六個入りをテイクアウト。これ順番を間違うとやや面倒。良い匂いを漂わせながら、コンビニ入店となってしまう。次に目指すのは公園。土地勘様々で難なく良席確保。生地の味も美味しい絶品を頬張った後、まだ熱い口内をビールでクールダウン、この幸せな繰り返し。斯くして災い転じて福となす。
電気グルーヴはテクノではなくオモシロ。無論個人的見解だが、昔からずっとそう思っている。彼等の前身バンド・人生の頃からそのオモシロは変わらない。義務教育中に出会ったデビュー盤はソノシート(!)。奇声と馬鹿々々しさに溢れた音楽は、つい三日前に聴いたが未だに威力抜群。グイグイとツボを刺激された。基本的にクレイジー、そこに「チープ」と「邪悪」のエフェクトがかかる。音楽面での高評価は電気グルーヴになって以降、揺るがないものがある。これは中心人物・石野卓球の評価とほぼイコール。さすが「世界に誇るテクノ・マエストロ」。
彼等の代表作はやはり『A』(’97)だろうか。ヒットシングル「Shangri-La」を擁したこのアルバムは、所属事務所の消滅、マネージャーの失踪などの災いを経て製作された、ちょっとちゃんとしていて、ずっと煌めいている一枚。所謂、福。お得意の殺傷能力高めのワードを抑えた辺りが、絶妙な匙加減かと。あと曲のつなぎ、最高。
【あすなろサンシャイン / 電気グルーヴ】
二.デッド・ケネディーズ
災い扱いしてはいけないが、歯の治療後というのはなかなか予定が立てづらい。数年前、学生時代からお世話になっている歯医者が武蔵小杉に引っ越した。それ以来、治療のたびに県境を越えている。せっかくだから界隈で呑もうと目論むが、なかなかうまくいかない。早く終わりすぎて開店時間までヒマを持て余したり、時間は丁度いいが一時間は食事NG、または「今日はお酒、やめときましょうか」とあっさり非情な宣告をされたり。数日前は前者のパターン。隣の新丸子まで足伸ばそうかな、と考えていると駅前に立飲み「T」発見。ノーマークだったが「角ハイ150円」と魅力的な誘い文句を見てしまった。ハイ、御入店。さほど期待せず、名物という「金運つくね 150円」をオーダー。二串、と思いきや「お一人様一本まで」。一瞬訝ったが、実際目の前に置かれると納得の大きさ。これ、二串は無理っす。黄身に絡めながら食べると最高に美味い。ハイ、福でした。オープンは午後三時とのこと。これからは早めに治療が終わっても大丈夫。
アルバムのジャケットを気に入り、どんな音か全く知らずに買う「ジャケ買い」。もちろんその逆もある。ジャケットがダサいから敬遠。聴かず嫌いというか何というか……。そんな理由で長らく聴かなかったのが、サンフランシスコ産のパンク・バンド、デッド・ケネディーズ。名前からしてアレだが、どのアルバムもジャケットがピンと来ない。加えてデビュー盤『暗殺』(’80)は、中古レコ屋の廉価盤コーナーの大常連。そんなこんなである日巡り合ったのが、4枚目『民主主義よ永遠なれ』(’86)。こちらのジャケットに問題はなく、そこそこ安値だったのでお買い上げ。もう一曲目からぶっ飛んだ。パンクというかハードコア。凄い速度で畳み掛け、ジェロ・ビアフラの扇情的な歌声が更に体感速度を上げていく。翌日以降、慌てて他のアルバムもチェック。やはり音楽は聴いてみないと。
【 Take This Job and Shove It / Dead Kennedys 】
三.ベック
ジャケ買いで印象深い記憶がもう一つ。まだ年端の行かぬ頃から、夜遊びへ導いてくれた十歳年上の恩人の話。ある晩、彼の家にお邪魔していると「ちょっと、これ見て」とアルバムを手渡された。ジャケットには謎のロボット。カマキリ型? ウサギ型? いやネズミ型? と考えなつつも二言目には「それにしてもダサい」「マジでヤバいよね」「何で買ったよ?」と言いたい放題。それから数ヶ月後、そのアルバムから先行カットされていたシングルがヒット。最終的に米国で120万枚以上売り上げたこのアルバムこそ、ベックの三枚目『メロウ・ゴールド』(’94)。やはり音楽は聴いてみないと。
昨年末に開催した、幼馴染みとの二人忘年会、一軒目に選んだのは阿佐ヶ谷の釣り堀「S」。前々から決めていたので準備万端。といっても釣具のことではない。いつも手指が練り餌臭くなるので、タオルやウエットティッシュを持参したまでのこと。池は金魚と鯉の二種。無論金魚。缶チューハイのロング缶を用意して、釣り糸垂らしながら乾杯。のんびりやるべ、と言っていたものの開始十分程で、お互い異変に気付く。あれ、今日全然釣れない……。その後も調子は上がらず、一時間経過して私が一匹釣ったのみ。阿吽の呼吸で切り上げることに決め、気付いたことが一つ。ちっとも酒が減っていない。どうやら余裕がなかったらしい。お陰であまり飲み過ぎなかったが、災いが転じたのかは謎。あと魚にほぼ触れていないから、手指も臭くならかった。これが福かどうかもやはり謎。
【 Loser / Beck 】
寅間心閑
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