辻原登奨励小説賞佳作の、松原和音さんの新連載小説『一月のレモネード』(第1回)をアップしました。推薦での大学進学を控えた女子高生ミクが主人公の物語です。大学進学も決まっていて年上の大学生の彼氏もいる。じゃあ満たされているのかと言えばそうではない。不安と物足りなさが入り混じる。そんな彼女の日常にスリップしてくる事件を描いた小説です。
若い作家の作品に中高生時代の心理を描いた小説が増えているという実感が石川にはあります。小説では社会的問題を取り上げることもできるわけですが、それがつかみ所がなくなっている。あらゆる社会問題はネットなどで全方向から検証され批判されてゆく。東日本大震災だろうとコロナ禍だろうと同じです。一昔前なら小説の大きなネタになり得た社会事象がそう簡単に小説化できなくなっている。それに反比例するように思春期小説が増えている傾向があります。
これはこれで現代社会のある本質を描き得る小説傾向だと思います。あとは誰が、どの作品がその根っこまで到達できるかですね。問題は単純でかつ、複雑で根深い。何で満たされるのか、何を求めているのかということです。それはもはや物質的欲求ではない。しかし小説である以上物質≒現世の猥雑からその本質に辿り着かなければなりません。『一月のレモネード』、一月ですね。あと11ヶ月ある。時間はたっぷりあるようで短くもある。期待の新人作家です。
■ 松原和音 新連載小説『一月のレモネード』(第1回)縦書版 ■
■ 松原和音 新連載小説『一月のレモネード』(第1回)横書版 ■
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