鶴山裕司さんの連載小説『横領』(No.06)をアップしましたぁ。金魚屋から『日本近代文学の言語像Ⅱ 夏目漱石論-現代文学の創出』を好評発売中の鶴山さんの連載小説です。主人公が追い詰められ始めましたね。むふふ。こっから大団円まで一直線でしょうな。どこまで追い詰められるのかなー。楽しみです(笑)。
当たり前のことですが、小説の主人公や登場人物には〝人権〟はありません。この人好きとか嫌いと言うのは読者の特権ですが、作家は何事かを明らかにするために小説の登場人物を仮構します。仮構された登場人物は現実の人間存在よりも強い存在です。何かを一貫させる。それによってテーマが露わになるわけです。
もちろん作家自身がしっかりとテーマを把握していない場合もあります。そういう時に〝登場人物が動く〟ということが起こります。最後まで作家自身はテーマを把握していなくても、小説の登場人物が自ずからそれを明らかにするわけです。
また小説は〝事件〟で動きます。私小説、つまり主人公の内面描写を中心とした小説では、ほとんど事件が起こっていないように思えることが多いですが、それは作家の技術が未熟だからです。事件はどんな形でも起こすことができます。コップが割れたでも事件になりますし、「嫌な人」と誰かに言われただけでも大事件になり得ます。波乱が起こらなければ作品の登場人物は、現実存在よりも抽象化された強い人格と意志をまっとうできないのです。
鶴山さんの『横領』では主人公の横領と不倫が事件の発端です。そこから物語が動いてゆく。ただそれは伏線に過ぎないと言うこともできます。『横領』については鶴山さんから原稿をもらった時に『通俗小説でちょっとだけ純文学』と書いてありました。考えてから書くタイプの作家ですから、割と気楽に書いたというのは本当でしょうね。
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