小原眞紀子さんの連載エセー『詩人のための投資術』『第二十二回 テクニカル分析II―有機質は死して』をアップしましたぁ。金魚屋から『文学とセクシュアリティ――現代に読む『源氏物語』』を好評発売中の小原さんの経済エッセイです。
小原さんは「テクニカル分析とひと口に言ってもさまざまで、何を選ぶか迷う。迷うのは、そのすべてが「正しい」からだ」と書いておられます。経済ではシビアな結果をもたらしますが、これは文学でも同じですね。結論に向けて、あるは一定の結論に会わせて分析を操作するのは簡単です。ですから『添い遂げるだけでなく、自分なりに研究し、深めたり広げたりする手法を見つけるのは、だから側から見るほど容易くはないし、またその努力は馬鹿々々しくもない』ということになります。
小原さんが惹きつけられるのは〝フラクタル〟概念のようです。『フラクタルとは自己相似であり、ある構造の部分が、その構造全体の相似形であるもの、たとえば星の形の箱の中に、ひと回り小さい星の形の箱が入っていて、その中にさらに小さい星のかたちの箱が…という入れ子状のイメージだ。レオナルド・ダ・ヴィンチの黄金比がそうであるように、視線を螺旋状に、奥へ奥へと無限に誘う神秘性が知られている』と説明しておられます。
このフラクタル理論への興味は経済だけでなく、小原さんの文学理論にもハッキリ現れています。『文学とセクシュアリティ』で小原さんは〝テキスト曲線〟を使って男女性差などの問題を明確に説明しておられます。『源氏物語』はもちろん多くの優れた文学作品もまたテキスト曲線を元にして読み解ける。つまりそれはある原形質ということになります。
小原さんは安井浩司さんの代表句『渚で鳴る巻貝有機質は死して』を引用して『わたしたち人間もまた、草や木、風や海鳴りと同じ原理に支配された自然物なのだから、その〝生命〟の本質はファンダメンタルズと呼ばれる浮世にはなく、無限の螺旋を描く〝構造〟そのものに息づいている』と書いておられます。世界原理は〝ある〟ということです。石川も賛成ですね。ポスト・モダン哲学を信じ続けられる人間がいること自体、信じられません(笑)。
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