『夏目漱石論―現代文学の創出』出版記念対談 鶴山裕司×寅間心閑『われわれはどこから来たのか どこへ行くのか』(上下編)をアップしましたぁ。金魚屋から『夏目漱石論-現代文学の創出』を好評刊行中の鶴山裕司さんと、文学金魚で『助平ども』を連載中の寅間心閑さんに対談していただきました。基本、『夏目漱石論―現代文学の創出』の出版記念対談です。前半は寅間さんの『助平ども』を中心にした小説のお話、後半は鶴山さんの『夏目漱石論』のお話です。
対談のタイトルは言うまでもなくゴーギャンの『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』から採りました。対談を読んでいただければおわかりになると思いますが、現代はわたしたちの文学の足元を確認し、その上で未来のパースペクティブを探らなければならない時代です。いつの時代でも〝現代〟を捉えるのは困難ですが、21世紀初頭には21世紀初頭の困難があり、何が問題の焦点なのかをはっきりさせないと、新たな文学のヴィジョンは見出せません。
夏目漱石は明治維新から40年までは初期の混沌の時代であり、この期間に活躍した文学者の仕事は評価できない、なぜなら初期の時代の文学は偶然と僥倖で評価されるからだ、と書きました。漱石の文学史観は40年単位の初期、中期、後期で、初期は新たな文学の草創期、中期は全盛期、後期は衰退期に当たります。これを現代に当てはめると、1988年から2027年までが新たな文学の草創期(初期の混沌の時代)になると鶴山さんは『漱石論』で書いておられます。当たっていると思います。
現代では詩、小説、評論のすべての文学ジャンルで表現方法と内容が揺れています。とりあえず売れる本がいい本だと評価せざるを得ないのですが、お腹に手を当てて『この本が将来名作として読み継がれるかね』と考えると、とてもそうは思えない本ばかりです。だって文学賞などを受賞して話題になり売れた本でも、一年後に新たな賞が発表される頃にはもうインパクトが薄れている。また出版社や流通の基盤も揺れています。文学全体が大きく動揺しているわけです。
この不安定な状態は改善した方がいいわけですが、特効薬はないです。考え抜いた者があるヴィジョンを提示し、『ああそっか』と納得したより若い世代が、それを基盤に新たなヴィジョンを体現するような作品を生み出すしかありません。文学金魚はその両方の役割を担いたいと思います。理論と実践がうまく噛み合わないと、しっかりとした文学の基盤はできあがらないからです。
■ 『夏目漱石論―現代文学の創出』出版記念対談 鶴山裕司×寅間心閑『われわれはどこから来たのか どこへ行くのか』(上編)【V】 ■
■ 『夏目漱石論―現代文学の創出』出版記念対談 鶴山裕司×寅間心閑『われわれはどこから来たのか どこへ行くのか』(上編)【H】 ■
■ 『夏目漱石論―現代文学の創出』出版記念対談 鶴山裕司×寅間心閑『われわれはどこから来たのか どこへ行くのか』(下編)【V】 ■
■ 『夏目漱石論―現代文学の創出』出版記念対談 鶴山裕司×寅間心閑『われわれはどこから来たのか どこへ行くのか』(下編)【H】 ■
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