連載翻訳小説 e.e.カミングス著/星隆弘訳『伽藍』(第30回)をアップしましたぁ。『第五章 大部屋の面々』です。詩人らしい小説なのですが、訳すのは大変ですねぇ。
どうしたらフランス政府が彼をラ・フェルテに置く必要があると結論できたのか俺は今だにわからない、仮にも――ああ、なるほどね……彼は実は頭脳明晰なこそ泥で内閣閣僚の親玉の箪笥から最高責任者預りの極秘文書を盗み取ったってわけか、ポワンカレ大統領が、昨夜、負け犬根性丸出しの南京虫を相手に反則的な肉弾戦を行なっていたことが発覚しましたなんて士気沮喪ものの由々しき情報漏洩罪だもんな……
(e.e.カミングス著/星隆弘訳『伽藍』)
といった具合に、カミングスさんの散文は延々と地口などを交えて続くわけです。こりゃ大変だ。ただカミングスの詩では回文になっているものもけっこうあります。末尾が頭に回帰して永遠循環するような詩です。息の長い文章はカミングスの世界観の表れでもあります。
アメリカのモダニストたちはちょっと奇妙なところがありまして、パウンドらは日本の俳句に影響を受けた短い詩を初期に沢山書きました。その当時は『長い詩を書くなんて気が知れねー』とか言っていたわけですが、中年以降にまーあきれるほど長い詩を書き始めました。
カミングスさんの詩は基本的には短詩に向かってゆくわけですが、アメリカ的なストレートさを保持しながら、深く読まれることを望むような作風に変わってゆきます。ただその初期には『伽藍』のような、実にベタッとした散文を書いていた。これもまたアメリカ的な変化であります。
■ e.e.カミングス著/星隆弘訳 連載翻訳小説『伽藍』『第五章 大部屋の面々』(第30回)縦書版 ■
■ e.e.カミングス著/星隆弘訳 連載翻訳小説『伽藍』『第五章 大部屋の面々』(第30回)横書版 ■
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