小原眞紀子さんの連作詩篇『Currency』『茸』(第14回)をアップしましたぁ。金魚屋から『文学とセクシュアリティ-現代に読む『源氏物語』』を好評発売中の小原さんの連作詩篇です。
二十世紀初頭の
著名な投資家 E・H・ウィンドレットは
弟子に向かってこのように述べた
「欲望は底辺に生える
あやふやな逡巡のうちに芽吹き
確信ありげに突き上げ
萎えてはまた突き上げ
いっとき天を目指す」
弟子は問うた
いっときとは何時までか、と
師は答えた
「自らのうちに撥をもち
自らの外側のドラムを叩け」
うちとはどこにあるのか
ドラムはなぜ外側にあるのか
謎は謎をよび
弟子たちは黙った
(小原眞紀子『茸』)
古典的な師弟禅問答風ですが、内容は現代、それも経済といふか金儲けが題材です。人間の欲望を巡っているわけですな。人間の欲望は様々です。お金に満ち足りれば名誉などになってゆく。きりがない。それをCurrency=現行通貨、あるいは流行のタイトルで小原さんは連作詩篇を書いておられるわけです。
ただたいていの人間の欲望は、ある文脈、コンテキストを離れてしまえばとたんに色褪せます。欲望はたいていの場合〝他者の欲望〟をなぞっています。なぜ金が欲しいのか、なぜ名誉が欲しいのか、なぜ文学の世界で有名になりたいのか(笑)。それを考えてゆくと、他者の視線で自分を見ている割合が大きいことがわかるはずです。
しかしそういった他者の欲望を離れた人間の欲望もある。それを考えてゆくと、「「自らのうちに撥をもち/自らの外側のドラムを叩け」/うちとはどこにあるのか/ドラムはなぜ外側にあるのか/謎は謎をよび/弟子たちは黙った」といふことになるでしょうね(笑)。
■ 小原眞紀子 連作詩篇『Currency』『茸』(第14回)縦書版 ■
■ 小原眞紀子 連作詩篇『Currency』『茸』(第14回)横書版 ■
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