小原眞紀子さんの連作詩篇『Currency』『森』(第13回)をアップしましたぁ。金魚屋から『文学とセクシュアリティ-現代に読む『源氏物語』』を好評発売中の小原さんの連作詩篇です。
魚は眠っている
海底の岩に
身を隠して
色鮮やかな尾ひれが
イソギンチャクに触れる
海の呼吸のように
吸っては吐く
水のさざめきは静かに
波の鼓動を生み
わたしは眠らぬまま
寝台の上で
ただ数えている
波の音を
森の木々を
天窓の星々を
街灯の下を
歩く足音が聞こえる
(小原眞紀子『森』)
今回は横へ横へと水平移動してゆき、ラスト近くで垂直軸が現れる詩です。こういった詩はできるだけ横方向の空間の拡がりが多い方が良いわけですが、小原さんはきっちりそうしておられますね。
小説もそうですが、詩も表現の99パーセントを支えるのは技術、テクニックです。技術がなければどんなにいいアイディアを持っていても表現できません。ただ詩の場合、技術を軽視する人が多い。義務教育の絵の授業と同じで、『あなたの心に浮かんだ言葉を素直に書きなさい』的な詩の書き方をしている方がほとんどです。
それは詩が思想的にも形式的にもまったく制約のない自由詩であることを示しているわけですが、徒手空拳で書ける詩は数編でしょうね。書き続けるためには技術を身につける必要がある。
小原さんは『源氏物語論』があるように、批評的思想家でもあります。考える人なのであって思想を重視しながら、肝心の踏ん張り所を感覚を研ぎ澄まして表現する。詩の書き方の基本だと思います。
■ 小原眞紀子 連作詩篇『Currency』『森』(第13回)縦書版 ■
■ 小原眞紀子 連作詩篇『Currency』『森』(第13回)横書版 ■
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