金魚屋から『文学とセクシュアリティ-現代に読む『源氏物語』』を好評発売中の、小原眞紀子さんの連載小説『No.008 本格的な女たち』をアップしましたぁ。同窓会サスペンス小説です。読んでいて、むふふと、ちょっとむず痒くなってしまふような小説ですね。
人間誰しも、キャーッと叫んでしまいたくなるような若い頃の恥ずかしい思い出が、一つや二つや百八個くらいあると思います。『本格的な女たち』は、そういう恥ずかしさをネタにした小説でもあります。ただもちろん、高度な小説的昇華が為されています。
人間の記憶は今現在によって過去が整理されてゆくものです。やたらと昔の仲間サイコーと言う人がいますが、10代20代の関係がそのまま続いているはずもなく、大人になるにつれ、現実利害を含む新たな関係を結び直しているわけです。その逆に昔の思い出を嫌う人は、以前とは別の価値基準を生き始めているのだと言えるでしょうね。過去に未練がないわけです。ただ小説家なら、脳天気な仲間サイコーでも、昔の仲間に未練ない、であってもいけません。人間関係の機微を見定める必要があります。
小説では殺人など、実際に起こってはいけない出来事が次々に起こるわけですが、作家は反社会的存在だからそういった事件を起こしているわけではありません。極端な事件は人間存在の本質を浮き彫りにするのに不可欠だからです。その機微を把握しなければ小説で衝撃的な事件を起こすことはできません。事件を起こせばいいというわけではなく、それによって生じる人間心理を先に把握しておかなければならないのです。
こういう人間心理の機微は、実際は日々の生活の中でどんどん起こっています。それをわかりやすく表現するのが小説だと言えます。若い頃の恥ずかしい思い出はネタになります。うんと極端な言い方をすれば、人間の心の中では陰謀や殺人事件が起こっている。それを小説という形にすれば、事件が起こった際の人間心理がまざまざと理解できるのだとも言えます。
■ 小原眞紀子 連載小説『No.008 本格的な女たち』縦書版 ■
■ 小原眞紀子 連載小説『No.008 本格的な女たち』横書版 ■
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