小原眞紀子さんの連載エセー『詩人のための投資術』『第十一回 オプションⅡ――雪豹の空売り』をアップしましたぁ。金魚屋から『文学とセクシュアリティ――現代に読む『源氏物語』』を好評発売中の小原さんの経済エッセイです。『マネー・ショート』という映画にもなった『世紀の空売り』を取り上げておられます。リーマンショックを見越した投資家がいたんですねぇ。
このエッセイの読者のなかには、どの世界も同じだな、と思われる方がいるだろう。まったくである。ちゃんと頭で考えればそうなるに決まっているのに、目の前の状況が変わるまで、絶対に直視しようとしない。世間の大半はそんなもので、大半がそうだから、それに従うのが正しいと思っている。文学状況などは突きつけられるものが遅れて来るだけに、なお一層そうである。
小原眞紀子
小原さんの経済エッセイは、文学が含まれる世界全体の経済状況を見据えた上で、文学の状況を的確に把握しようというものです。昔からそうだったのだと言えばそうですが、現代ではなおのこと、社会―世界の大きな枠組みを決定するのは経済です。文学者は民族や宗教など、タテマエ的なイデオロギーについて論じるのは得意ですが、経済はたいてい弱いですね。でも経済の理解なしに、文学の根本的状況を左右する世界動向を把握することはできません。
仮想通貨を始めとして世界の経済システムは大きく変化しています。武力を使った戦争ではなく、経済によって実質的な〝利〟を取る経済戦争も激しくなっている。どんな時代でも変わらない普遍的人間像を探求する文学が、現代経済から取り残されてゆくのは半ば当然です。現代の新しさが一過性のものなのか、本質的なものなのか判断がつかないのです。
でも新たな経済フレームに伴う大きな変化は、国境、民族、宗教を越えた流動性を世界にもたらすでしょうね。それは文学が普遍的と考えてきた人間存在の基盤を質的に変化させるはずです。それをある程度具体的に把握できれば、経済は経済の問題として突き放せるでしょうね。
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