原作小原眞紀子、作露津まりいさんの連載サスペンス小説『お菓子な殺意』(第27回)をアップしました。第15章『箱を開いてシャンパンを』(前編)です。『お菓子な殺意』も完結間近です。こういう質の高いサスペンス小説を安定して書ける作家は貴重です。
小説は基本物語です。中上健次は晩年盛んに〝物語の復権〟ということを言い、路地の物語から神話世界へと遡行してゆく姿勢を見せました。石川は中上さんの姿勢は正しかったと思います。大きな社会変化のうねりのなかで戦後的なものが失われてゆく時代に、小説の基本的立脚点を無骨なまでに確認しようとなさったからです。
芥川賞などを受賞しないと純文学作品が売れない理由の一つに、小説の物語軽視があります。現代人はもはやいつまで経っても何も起こらない小説を、狭い文壇内で評価されているという理由で我慢して読むほどヒマではありません。文体が美しい云々といった評価は相対的なものに過ぎないのです。知性や感性を刺激するコンテンツは世の中に溢れており、小説はもはやその一部に過ぎません。小説でなければならない理由が納得できる作品でなければ読者は手を伸ばしません。
サスペンス小説はある意味小説の大原則的基本だと思います。事件が起こり、それに沿って物語が動いてゆく。事件が起こった以上、作家はなんらかの形でその始末をつけなければなりません。この始末が作家思想を示すことになる。戦後なら戦後、現代なら現代固有の作家思想が表現されているかどうかが作品の文学的価値を決めるわけです。
文学作品は結局のところ作家が作品でなにを表現したかったのか、つまりは〝作家思想〟の質の高さで決まります。ただそれには技術が必要です。的確な技術を伴わない作家思想が不特定多数の読者を惹き付けることはありません。またこの技術には〝ジャンルの掟〟が深く関係してきます。
小説と詩では、同じ作家思想でもその表現方法が違ってきます。それを無視して小説を書き、純文学だ、前衛小説だと主張するのは作家のエゴに過ぎません。もし小説で前衛的な新しいことをしたいと思うなら、まず小説文学のジャンルの掟をきっちり認識把握する必要があります。小説には基本技術(ジャンルの掟)があります。いきなり背伸びしても結果は得られない。キレイに前転もできない人が、オリンピックに出られないのと同じことです。
■ 小原眞紀子・原作 露津まりい・作 連載サスペンス小説『お菓子な殺意』(第27回) 第15章『箱を開いてシャンパンを』(前編)縦書版 ■
■ 小原眞紀子・原作 露津まりい・作 連載サスペンス小説『お菓子な殺意』(第27回) 第15章『箱を開いてシャンパンを』(前編)横書版 ■
■ 第6、7回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
第06回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■