連載翻訳小説 e.e.カミングズ著/星隆弘訳『伽藍』(第20回)をアップしましたぁ。『第四章 新入り』の続きです。大昔、といっても1970年代くらいですが、詩の世界ではとりたてて英語能力のない詩人が辞書片手に翻訳を行っていました。まーそれなりに仕上がってましたが、やっぱ一定以上の語学能力がないと翻訳はやっちゃダメですよねぇ。ポスト・エディットということで、詩とか小説を、詩人や小説家が直すはアリだと思います。
これはホントに大昔、森鷗外先生は膨大な量の翻訳をしておられました。役所から帰ってきて子どもたちと遊んで夕食を一緒に食べて、ちょいと寝て朝の3時頃から口述筆記専門の人を家に呼んで、原書片手に翻訳しておられた。明け方から自分の原稿を書いた。ほんでそのまま役所に出勤した。明治の男、恐るべしです。
ただ鷗外先生、『舞姫』以降、小説家が書けなかったんですね。20年くらい小説を書いていません。文語体から言文一致体に移行の時期で、なまじ完成度の高い文語体小説を書いたことが、かえって先生の足を引っ張っちゃったんです。
で、その間、鷗外先生は評論を書き、翻訳をしておられた。特に翻訳力を入れて、アンデルセンの大著とかゲーテの『ファウスト』を訳された。アンデルセンは、意図的に翻訳し終わるまで時間のかかる長い本を選んだ気配があります。よーするに時間稼ぎ。翻訳とか評論で文学の仕事に携わりながら、小説をどう書こうか、小説はどうなるのか考えていたんですね。
そういうのも文学者の能力の一つです。人間にはそれぞれ適切な時があります。ただ突然思い立って詩や小説を書いてもたいていうまくいかない。自分の能力を駆使して文学のジャンルの中で、できる仕事を積極的にこなすのも大切だったりするのです。
■ e.e.カミングズ著/星隆弘訳 連載翻訳小説『伽藍』『第四章 新入り』(第20回)縦書版 ■
■ e.e.カミングズ著/星隆弘訳 連載翻訳小説『伽藍』『第四章 新入り』(第20回)横書版 ■
■ 第06回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
第06回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■