青山YURI子さんの連載小説『コラージュの国』(第14回)をアップしましたぁ。『(モンゴル)×(ベネズエラ)×(韓国)=?』のコラージュの国への旅の続きです。草原が海に変わり、パンパにぽつんと立つゲルと呼ばれるテントのような建物が韓国人がやっているラーメン屋というのがいかにも青山さんらしい。アンヘラが着ているTシャツがH&Mで2ユーロという記述もかなり好きです。この作家の中では具体的現実と非現実が無理なくつながっています。境目が曖昧というより、ほぼ存在しない。
石川は長いこと編集者をやっていますので、なんとなく原稿から作家の性格や思考を読み取る癖がついています。たいていは実際会って話すより正確な作家情報を与えてくれます。青山さんという作家は、多分ですが飽きっぽい(笑)。次から次に新奇なもの、強く興味を惹かれるものに目移りしてゆく。それが彼女の作品の〝移動〟になって表れていると感じます。ただ浮気な好奇心の塊だから飽きっぽいのではない。そこにはこの作家特有の目的意識があるように思います。
この青山さんの目的意識は恐らく複雑なものです。言葉を使って新しいタイプの作品を作り上げたいという欲望が基本にある。ただしそれは神秘主義とか民族主義とか、わたしたちがよく言う何かの〝深み〟に潜行してゆくものではありません。組み合わせること、つなぎ合わせること、コラージュすることで得られるのでしょうね。ある作品が出来上がってしまってから、作家自身が『ああ、こういうことかぁ』と呟くような驚きのある作品です。作品のパーツはありきたりのものではダメなので、常に新しい文学的マテリアルを探しているのだとも言えます。
こういったタイプの作品は、作家が力業でねじ伏せて完成させるしか、形にするすべがありません。もちろん成功するとは限らない。もしかすると大失敗になるかもしれない。またそんなことは当然作家もわかっているので、『これでいいのかなぁ』と書き悩むことになる。ただ文学の世界では常に小さな成功よりも大きな失敗の方が優れた試みなのです。こじんまりした凡庸な作品より、大失敗作の方が価値がある。作家にすら最後のところ未知の部分のある作品は、パッケージにまとめて初めて完成し手離れします。それまでは作品は流動体です。青山さんの目的意識には、当然本にまとめるという力業も入ってくるでしょうね。
■ 青山YURI子 連載小説『コラージュの国』(第14回)縦書版 ■
■ 青山YURI子 連載小説『コラージュの国』(第14回)横書版 ■
■ 第06回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
第06回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
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