青山YURI子さんの連載小説『コラージュの国』(第13回)をアップしましたぁ。今回は『コラージュの国』のミューズ、アンヘラの描写が多いです。
「ほら、見て」一本の砂の滝は、右に揺れ、左に逸れた。風が、西から吹き、今、東から大きく空気が流れ込む。彼女が、僕の左隣で、大きく一回転したからだ。(中略)(スピードは最高潮になる、彼女が今まさに元の国々を混ぜている。彼女の旋回を見ていると、僕の思考も収縮しては、解放されるように広がる。)力尽きてきて、遊園地の入場口のような重い鉄の格子を押して回転さすことができずに後ろに跳ね返されて、ガクンと音がなったかと思うほどに機械的に崩れた。胸下から八段階に膨らんだ白いワンピース(彼女の言うにはH&Mのサマーセールで7ユーロで彼女のものになった)が埃で瞬時に色褪せた。笑って砂を叩くと、湿っていて簡単に落とせない塊があった。「ねぇ、水に入ってみる?」
(青山YURI子『コラージュの国』)
美しい描写ですね。現実がなにかの拍子でクルリと回転し、非現実の世界に入ってゆくのが青山さんの小説の魅力です。しかしそこには常に現実の手触りがある。だけどそれが決して俗な感じを起こさせない。
青山さんは『コラージュの国』でコンビニはオアシスのようなもので、看板を見ただけで安心するといった事を書いておられました。『彼女の言うにはH&Mのサマーセールで7ユーロで彼女のものになった』という描写にも同じような手触りがありますね。
小説世界が喚起する現実感覚はけっこう微妙で、私小説の現実はなんだか古くさくて貧乏臭かったりします(笑)。その逆にオシャレな感じのアーバン小説の現実はちょいと背伸びして無理している感じが漂うことが多い。要は読んでいてやっぱフィクションだなと思ってしまうのです。
しかし青山さんの小説の現実感覚は等身大の、それも現代の資本主義社会等身大の現実なんだな。魔法を起こすのに古いランプはいらないわけで、青山作品ではバーゲンで買ったワンピースが簡単に異界への入り口になったりするのです。
■ 青山YURI子 連載小説『コラージュの国』(第13回)縦書版 ■
■ 青山YURI子 連載小説『コラージュの国』(第13回)横書版 ■
■ 第06回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
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