小原眞紀子さんの連作詩篇『ここから月まで』『点/席/水』(第28回)をアップしましたぁ。小原さんのCool抒情詩第28弾です。
いつも薄青く
ときおり白く
僕の輪郭になじむ
オレンジが三つ
転がってくる
水を掻きわけて
橙色のさざ波をたて
ナイフから滴り落ちる
雑踏にむかう僕のために
乾いた世界のなかで
(小原眞紀子『水』)
『水』という詩編はちょいと孤独感が滲みますね。個人的なそれといふより人間存在一般に敷衍できる孤独感だと思います。人間はまあ孤独から逃れられない。どんなにわあわあ賑やかしくしてても孤独です。作家はそれを一番よく知っている人種でなければならない。頼れるのは結局自分だけですからね。
詩人にはプライドの高い人が多いですが、身も蓋もないことを言えば最低の経済的背景があってのことだと思います。1980年代頃までは、少ないとはいえ詩人も稿料や本の印税収入を得ることができた。それが今では大家中堅詩人に至るまでほぼなくなりつつある。
1、2冊詩集を自費出版するのはまあいいとして、それが何十年も続くと必ず意欲が衰えると思います。本が売れないのだから仕方がない、詩人の自業自得だとは言えます。だけどプライドが高い、つまり自分は作家として優秀だという確信があるなら、なんとしてでも現状の情けない状態から抜け出すべきでしょうね。
金魚屋の詩人さんたち、多才です。初めっから多才だったんぢゃなく、意識と努力を重ねて表現の幅を拡げている。それがこれからの詩人の一つのモデルになるんぢゃないかと石川は思います。小説でも文芸評論でも美術、古典評論でも能力があるならどんどん執筆範囲を広げれよい。詩人だから詩と詩論しか書かない、書けないというのは臆病なだけかもしれませんよ。
■ 小原眞紀子 連作詩篇『ここから月まで』『点/席/水』(第28回)縦書版 ■
■ 小原眞紀子 連作詩篇『ここから月まで』『点/席/水』(第28回)横書版 ■
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■