純文学エンターテイメント作家、遠藤徹さんの連載小説『ムネモシュネの地図』『第05回 (二)象の頭(象さん・イン・密室)(上編)』をアップしましたぁ。ようやく本題の殺人事件に入りましたが、それはまーそれとして置いといて、と(爆)。遠藤さんのこの手の小説は、寄り道の記述の方が断然面白いです。知の根っこがつながっているんですな。
ペダンティズムって、たいていの場合、嫌みなものです。特に今のような情報化時代では、知識をひけらかすこと自体、時代遅れの感があります。きっかけを得れば誰でも簡単に大まかな情報を得られるのですから、情報の囲い込み――つまり僕は私はこんなこと知ってるんだよね~、という自慢自体が、現代にアップデートできていない精神を示してしまいます。書棚に稀覯本を並べて知識人のふりができる時代は完全に終わったのです。
ただ人間の知的活動が情報を原動力としているのは変わりません。しかし現代は謎がなくなっている。今まで知らなかったことは一瞬で既知の情報になり、その情報の質が高いから、一昔前のように突拍子もない想像を膨らませることはできません。白日の下にさらされた情報を使って未知の領域を切り開いていかなければならないということです。
このような現代社会で重要になるのは情報の求心点です。情報は情報に過ぎないわけですから、それをどう組み合わせ、根っこでどうつながっているのかを構築できる知性ですね。『ムネモシュネの地図』に登場する種山先生は、そういった知性の持ち主です。Aという情報を与えれば思考がZまで進んでしまう。地下茎で情報がつながっているわけで、それは遠藤さんという作家の特徴でもあります。
ちょいと話が飛びますが、日本の近・現代文学が成立したのは明治40年代です。そこから現代まで約100年。この間に、小説文学は主題的にもテクニック的にも一定の飽和に達したと石川は思います。少しだけど、決定的に変化しなければ次の展望は見えてこない、という時代ですね。小説は物語の起承転結で進んでゆきますが、現代的思考方法を援用すれば、Aから始まって出発点とはぜんぜん関係のないZに着地する小説があってもいい時代です。
■ 遠藤徹 連載小説『ムネモシュネの地図』『第05回 (二)象の頭(象さん・イン・密室)(上編)』縦書版 ■
■ 遠藤徹 連載小説『ムネモシュネの地図』『第05回 (二)象の頭(象さん・イン・密室)(上編)』横書版 ■
■ 第05回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
第05回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
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