小松剛生さんの連載ショートショート小説『僕が詩人になれない108の理由あるいは僕が東京ヤクルトスワローズファンになったわけ』『NO.040 フォークについて』をアップしましたぁ。ギリギリボーイ、小松さんの新作です。金魚屋、悠長ですが、何事にも区切りがあります。そろそろでんな。
作家には長所と短所があります。そしてたいていの場合、長所よりも短所の方が、読者には作家独自の魅力として伝わります。このあたりの機微は非常に微妙です。ただ作家はどこかで短所――自分の最も弱い点であり、強みでもある点――をさらけ出していかなければなりません。オールマイティで知的で常識的な作家くらい、面白味のない作家はいないと言ってもいいでしょうね。そういう作家ははっきり言えば、何かを隠している。
〝俺は、わたしはバカぢゃない〟と主張しているような作品はアカンのです。作家としての成熟が足りないといふことです。〝ある点に関してはバカですけど〟と書ける作家は、確実に別の点で強みを持っている。腹の底からわかっていないから、なんでもわかっているようなふりをしてしまうということですな。文学者の場合、知的に振る舞おうとする作家はあまり優秀ではないと言えるでしょうね。
ぢゃあどうやったら長所への執着を捨てて短所をさらけ出してゆけるのか。ある種のデッドラインを自ら超える勇気を持たなければムリでしょうね。超えてみればハードルは意外に低かったことがわかるでしょうが、何度かバーを落とすのが普通です。もちろん一生超えられない作家もいる。
そういった作家はええかっこしいで終わるわけですが、読者は魅力を感じない。太宰はもちろん、夏目や鴎外や三島だってある面ではとてつもない愚か者です。オールマイティな人間など存在せず、それは現実を直視することができない人間たちが作り出した、底の浅い保身に過ぎません。
■ 小松剛生 連載ショートショート小説 『僕が詩人になれない108の理由あるいは僕が東京ヤクルトスワローズファンになったわけ』『NO.040 フォークについて』 縦書版 ■
■ 小松剛生 連載ショートショート小説 『僕が詩人になれない108の理由あるいは僕が東京ヤクルトスワローズファンになったわけ』『NO.040 フォークについて』 横書版 ■
■ 第05回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
第05回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
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