大篠夏彦さんの文芸誌時評『文芸5誌』『No.108 加藤秀行「キャピタル」(文學界 2016年12月号)(前編)』をアップしましたぁ。加藤秀行さんは三十四歳で、大篠さんの紹介文を引用すると『東大経済学部卒業後にドリームインキュベータに勤め、その後、子会社のDIマーケティングを設立して代表取締役に就任したとある。ドリームインキュベータは実業家の堀紘一氏が設立した会社で、企業コンサルやM&Aを行う会社』です。文學界新人賞を受賞した久しぶりのホープです。
優れた作品が掲載された時にしか言えないので言ってしまうと、文學界に限らず、ほとんどの純文学文芸誌に掲載された作品は、冒頭の数ページを読んだだけで読み続ける気が萎える。せっかく物語を始めても、たいていの作家がそれをどこに送り届ければよいのか自分でもわかっていない。あるいは最初から物語を、どこかに、何かの地平に届かせることを諦めているのが手に取るようにわかる。またそういった小説が雰囲気(アトモスフィア)純文学業界を形作っている。アトモスフィア純文学とは、深刻そうな顔つきはしているが中身のない小説のことだ。
ただ前衛を称する作家や批評家の中には、「小説に中身など必要なのか?」と反論する人もいるだろう。いるに決まっている。わたしたちは中身のない小説を、社会で権威とされる雑誌に掲載されたくらいで読み、誉めちぎるほどヒマではない。純文学、つまり社会的要素であれ個人的事情であれ、なんらかの人間世界の〝純〟を描きたいという気概があるなら、読者に〝中身がある〟と思わせなければ所与の目的を達成できない。青臭いことを言えば、それが小説や詩などを書き始めたガキやコムスメが、人生の時間が尽きるまで追い求める目的である。文学など目的がないなら、あるいは目的を見失ったらやめてしまえばいい。
大篠夏彦
つまり加藤秀行さんの小説には、読むべき〝中身〟がある。優秀な作家です。
■ 大篠夏彦 文芸誌時評 『No.108 加藤秀行「キャピタル」(文學界 2016年12月号)(前編)』 ■
■ 第05回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
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