岡野隆さんの『詩誌時評・句誌』『No.068 角川源義、角川春樹(「月刊俳句界」 2016年10月号)』をアップしましたぁ。特集『源義と春樹』を取り上げておられます。岡野さんは『なんとも批評しにくい特集である。(中略)源義氏も春樹氏も、俳人であると同時に大きな現世的力を持つ実業家である。(中略)賞賛するにしても批判するにしても、誰だって余計な火の粉が身に降りかかることは避けたい。(中略)しかしそうも言っていられない。ちゃんと作品を読んでみましょう』と批評しておられます。
このところ作品をダシに自己のしょーもない思想を語る〝創作批評〟が全盛ですが、そんな批評家でも足元の事に関してはおとなしい。つまり天下国家を論じる際は威勢がいいですが、既存メディアや批評家に対しては舌鋒が鈍る(爆)。人間の世界ですから致し方ないことであり、また批判すればいいってものではないですが、現実の具体的文脈を踏まえていない抽象論はやっぱ弱いです。
大寒や子持ち鰈のさくら色 角川源義
この句について岡野さんは、『なんということはないが秀句である。表は茶色っぽいが、子持ちカレイの腹側はさくら色だ。それは大寒の対局としての春をも示唆している。写生のみで相反するベクトルが一句で表現されている』と批評しておられます。
火はわが胸中にあり寒椿
瞑れば紅梅墨を滴らす
補陀落やかなた明るき鰤起し
睡りても大音響の桜かな
にんげんに辺境ありて火を焚けり
春の山大悲の水の流れけり
蒼茫の夜空を渡る雁の数
角川春樹
春樹氏の句について岡野さんは、『源義氏の高い観念性は春樹氏にも確実に受け継がれている。「瞑れば紅梅墨を滴らす」「睡りても大音響の桜かな」などの句には、源義氏の句に内在していた矛盾の統合がさらに露わな形で表現されている。テニオハ的技巧ではなく、こういった観念の俳句血脈の継承もあっていい』と批評しておられます。じっくりお楽しみください。
■ 岡野隆 『詩誌時評・句誌』『No.068 角川源義、角川春樹(「月刊俳句界」 2016年10月号)』 ■
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