大篠夏彦さんの文芸誌時評『文芸5誌』『No.104 文學界 2016年09月号』をアップしましたぁ。小山内恵美子さんの『御堂の島』を取り上げておられます。小山内さんは確か、三田文學推薦の同人誌優秀作品から現れた作家さんじゃなかったかな。まだ単行本は出てないようですが、文學界さんには年に1回くらい作品が掲載されているやうな。
引用は小説の冒頭の方だが、この箇所に「御堂の島」という作品のストラクチャーは明確に示されている。(主人公の)小夜が行くのは本土から海で遠く隔てられた孤島だ。彼女には痴呆症の母親がいて、ひっきりなしに娘に電話をかけてくる。フェリーで島に上陸しようとしている瞬間もそうだ。目では海と島を見ながら、小夜の心は母親との苦しい世界に閉じ込められている。神聖だが禁忌に満ちた絶海の孤島と、小夜と母親の閉じた関係は相似である。物語は閉じた関係を深めるか、それをなんらかの形で破壊するしか進みようがない。もちろんどちらに進んでも良い。
(大篠夏彦)
大篠さんの批評は、昨今文芸誌に掲載される〝創作文芸批評〟ではありません。小説作品をダシにして、批評家のしょーもない思想を語る批評ではないということです。小説はどう書かれるべきなのかを考える、正統派の文芸批評です。作家の思想と小説技術を読み解いて、よりよい小説の姿を模索するための批評だと言ってもいいです。
文学金魚は総合文学を掲げており、ジャンルの越境や混淆に寛容です。しかしそれは曖昧なアトモスフィアでは不可能だと考えます。詩人で小説を書き、小説家で詩を書く作家はたくさんいますが、はっきり言えば誰も各ジャンルを本業とする作家の作品に比肩できていません。〝各文学ジャンルの雰囲気をなぞる〟だけではダメなのです。思想と技法の両面からジャンルの本質を捉える必要がある。大篠さんの文芸批評は実践的に役に立つと思います。
■ 大篠夏彦 文芸誌時評 『No.104 文學界 2016年09月号』 ■
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