山本俊則さんの美術展時評『No.070 『古代ギリシャ』展(後編)』をアップしましたぁ。東京国立博物館で開催された、『特別展 古代ギリシャ-時空を超えた旅-』の批評です。ギリシャの民主主義は、奴隷を労働力にした貴族的自由市民によって作られました。今とはちょっと質が違うわけですが、民主主義の原初形ではあります。法の下での平等や言論の自由が認められていたからです。また陶片追放(オストラシズム)という、選挙によって〝民主主義の敵〟を一定期間、町から追放する制度もありました。なんで紀元前にこんな制度が成立したんでしょうね。不思議といえば不思議です。
丘陵部や島が多く各都市(ポリス)が離れ離れで固有の文化が成立しやすかったこと、また穏やかで航海に適したエーゲ海に囲まれていたことなどがギリシャ文明を育んだ大きな要因かもしれない。ただそれはあくまでギリシャ人のための文化だった。(中略)外部が圧倒的力として立ち現れた時に、ギリシャ文明はその終焉の時を迎えたのである。
マケドニアもローマも近代で言う帝国主義国家だった。その版図を広げることが権威と国力増進の指標だった。それは世界各地で二十世紀半ばまで続くことになる。現代でも広大な領土を持つ国は、表向きは民主制を採っていても為政者に絶対権力を与えて国家と民俗の一体性を保つ傾向がある。また民主主義国家は内部で完結しがちだ。国内では言論の自由が保障され様々な意見が飛び交っていても、外部勢力による干渉を極度に嫌う。閉じた民主主義国家は常に外部勢力に脅かされ、拡大し続けようとする帝国主義はいずれ分裂して崩壊してゆく。ギリシャ文明は確かに人類史の縮図である。
(山本俊則)
今回の山本さんの美術展批評はちょっと示唆的だなぁ。今、朝鮮半島で緊張が高まっています。アメリカがあれだけの艦船を派遣して、何もしないで撤収するとはちょっと考えられません。それぞれに閉じた国家が交わり合わない主張を繰り返し、衝突に至ることは、歴史上無数に繰り返されています。また紛争が起これば必ず国家的民族主義が恐ろしく強まり、さらなる紛争を呼んでゆきます。本当に20世紀的世界秩序フレームが終わろうとしているのかもしれません。
■ 山本俊則 美術展時評『No.070 『古代ギリシャ』展(後編)』 ■
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