小松剛生さんの連載ショートショート小説『僕が詩人になれない108の理由あるいは僕が東京ヤクルトスワローズファンになったわけ』『No.024 一角獣/オモプラッタ/愚かさについて』をアップしましたぁ。どれも魅力的なショートショートですが、『一角獣』はいい仕上がりですね。聖と俗と現実がうまく表現されています。
「牛乳を飲む者だけが幸せを運ぶことができるんだ」と僕が彼に冗談混じりに言うと「だから僕には角しかないんだ」と真剣な表情で返されてしまって、なんだか気まずくなってしまったこともあった。
「いいじゃない、君だけが豆乳を飲めるんだし」
「あげようか」
差し出された緑色の紙パックを僕は丁重に断った。
悲しそうな顔をして、彼は付属のストローをパックに挿して中身をずずずと吸い始めた。真剣な顔つきでアレルギーという現実と戦う彼が、そこにはいた。
(小松剛生『一角獣』)
若くして完成度の高い作品を書く作家もいますし、ある程度の年齢に達しなければ文体も内容もまとまらない作家もいます。どちらの場合もメリット・ディメリットがあります。前者は頭角を現しやすいですが、若くて完成度が高いというのは、しばしば身の丈に合った表現――つまり無理をしないから完成度が高くなるという面があります。完成度が高ければ高いほど、殻を破るためのハードルも高くなるわけです。
後者はいったん文体と内容が合致すれば、安定して作品を量産できるようになります。しかしまあ年齢がいっていることは表現者にとっては大きなディメリットです。40歳くらいまでならそこそこ若手で通りますが、50歳を超えたら厳しい。どの業界でもやっぱ若くて新鮮な才能を探しているわけです。それを破るには圧倒的な力が必要です。遅くデビューして『一から勉強します』ぢゃ話にならない。年を取って本格活動するなら、デビューした時点で業界20年、30年選手のような顔をして、かつそれに見合った力を持っていなければなりません。
■ 小松剛生 連載ショートショート小説 『僕が詩人になれない108の理由あるいは僕が東京ヤクルトスワローズファンになったわけ』『No.024 一角獣/オモプラッタ/愚かさについて』 pdf ■
■ 小松剛生 連載ショートショート小説 『僕が詩人になれない108の理由あるいは僕が東京ヤクルトスワローズファンになったわけ』『No.024 一角獣/オモプラッタ/愚かさについて』 テキスト ■
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