Interview of gold fishes 第18回 金守珍(キム スジン)『アングラ演劇を継ぐということ(中編)』をアップしましたぁ。金守珍さんは劇団・新宿梁山泊主宰で俳優・演出家です。
大前提的なことを整理しておきますと、歌舞伎やお能といった日本の伝統的舞台(劇)とは別に、明治になって新しく生まれた演劇が〝新劇〟です。御維新後の多くの芸術がそうですが、演劇も最初はヨーロッパ演劇の翻訳から始まり、次いでその形式や内容を踏まえてオリジナル脚本が書かれるようになりました。基本的に現実世界に基づいた起承転結のある演劇(ドラマ)です。
〝アングラ〟は1960年代末に現れた新しい演劇です。寺山修司と唐十郎が代表的作家だと言っていいでしょうね。金さんは『唐さんたちは、自分たちをアングラと言ったことは一度もないんです。アングラというレッテルを貼られちゃったんです。ただ当時はアングラとアジトがセットだったからね。秘密結社的な匂いはあったわけで、文化的なテロリストとしてなにかやってやろうという感じは伝わってきます』と、的確にその名前の由来をお話されています。
アングラ演劇は当時確固たる人気と商業基盤を持っていた新劇への批判から生まれたという面があり、反商業主義、反新劇的演劇(ヨーロッパ的演劇)を掲げました。ただ現代でも問題になるのは後者の新劇的演劇様式の解体です。単なる〝アンチ新劇〟なら一時的な流行で終わったはずなのです。しかし寺山は穢であり聖である母なる土俗世界に踏み込み、唐はさらに無意識が意識化されるような極めてオリジナリティの高い演劇を生み出しました。アングラ演劇は寺山と唐によって短期間のうちに、わたしたちの意識の奥底に届くような根源的前衛劇へと昇華されていったのです。
1970年代になると〝小劇場〟と呼ばれる新たな動きが生まれます。ちょっと乱暴な言い方ですが、新劇は基本的にテレビや映画でも通用するようなドラマを目の前で役者が演じる演劇ですから、小劇場は多かれ少なかれ寺山・唐的なアングラ的要素を取り入れていました。ただそこに本当に新しい演劇があったのかどうかというのが、金守珍さんへの鶴山裕司さんのインタビューの中心主題になっています。
もちろん文学史と同様に、演劇史の捉え方も様々です。しかし軸を設定しないと問題の焦点がぼやけてしまうのはどのジャンルでも同じです。20世紀の日本が生み出した最も優れた前衛劇は、寺山・唐の演劇だと言っていいと思います。唐十郎は戯曲『少女仮面』の主人公を、宝塚歌劇団のほぼ創立メンバーで大スターだった春日野八千代という実在の人物に設定しましたが、そこには微かな揶揄と、日本の演劇の歴史を踏まえる姿勢があると思います。
なおインタビュー下編は12月01日(11月30日深夜0時)にアップします。また新宿梁山泊は現在、シェイクスピア作の『マクベス』を上演中です(11月27日まで)。また来年01月19日から23日には、Project Nyx 第16回公演 『時代はサーカスの象にのって』(寺山修司作)の公演があります。ご興味をお持ちの方はHPなどでチェックなさってください。
■ Interview of gold fishes 第18回 金守珍(キム スジン)『アングラ演劇を継ぐということ(中編)』 縦書版 ■
■ Interview of gold fishes 第18回 金守珍(キム スジン)『アングラ演劇を継ぐということ(中編)』 横書版 ■
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