連載文芸評論 鶴山裕司著『夏目漱石論-現代文学の創出』(日本近代文学の言語像Ⅱ)(第3回)をアップしましたぁ。鶴山さんの『漱石論』は『日本近代文学の言語像』三部作の中の一冊で、『正岡子規論』、『森鷗外論』といっしょに来春金魚屋から三冊同時刊行されます。今回から『第Ⅱ章 漱石小伝』ですが、この章には『『漱石とその時代』を未完のまま自死した江藤淳に』という副題がついています。
江藤さんは最晩年に長大な漱石の自伝を書き始めましたが、それを完成させることなく自殺されました。鶴山さんの『漱石小伝』は江藤さんの思想を踏まえているわけではなく、それどころか江藤さんを含む今までの漱石神話解体の方向に進んでいます。しかし先行者の思想とは異なる新たな思想を提示する方が、より文学的(学問的)友愛というものだと思います。
21世紀初頭の文学は新たな思想と作品を必要としています。しかし文学が決定的に不況産業になって以来、当たり前ですが文学業界に優秀な人材が集まらなくなっています。たとえば文芸批評でデビューしてもすぐにそれに見切りをつけ、現代ではより重要な課題である政治経済批評に移行する批評家も増えています。言葉は悪いですが、これだけ文学者の知的レベルが下がっている現状ではそれは致し方ない。石川の経験でも打てば響くようなヴィヴィッドな人材は、今までサブカルと呼ばれていて、実際にはメインカルチャーになっている業界に多いです。
ただ文学者で自分の創作だけではなく、文学全体の振興をも考えられるだけの知性を持っている者なら、自らの手で現状を変えてゆくしかありません。ほとんど瓦解寸前の自由詩の業界から鶴山さんのような人材が現れてきたのは、奇妙なようで必然でもあるかもしれません。短歌・俳句を含む詩の業界はなんやかんや言って小説文壇より縛りが緩い。従来とは違う文脈の仕事を自分で見つけて実現させてゆくことができる。今は既成文学概念がガラガラポンになる時代ですが、文学ジャンルについてもある程度はそれが起こると思います。
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■ 連載文芸評論 鶴山裕司著『夏目漱石論-現代文学の創出』(日本近代文学の言語像Ⅱ)(第3回) 横書版 ■
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