小松剛生さんの連載ショートショート小説『僕が詩人になれない108の理由あるいは僕が東京ヤクルトスワローズファンになったわけ』『No.023 貝の終わりとハードボイルド・ツイッターランド(1)/(2)/(3)』をアップしましたぁ。今回は連作ショートショートです。付記で小松さんが書いておられますが、村上春樹さんの『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』にインスパイアされて書かれた作品です。ま、小松さんの場合、『裂けるチーズ? そういえば、裂けないチーズってこの世にないんじゃないかしら』といふ発想で、一本ショートショート小説が書けてしまふわけですが(爆)。
小松さんが村上春樹さんから大きな影響を受けていることは、作品を読めば多くの人が気づくことです。でもまあそれは大した問題じゃない。先行作家から影響を受けていない作家はいません。作家だけじゃないですね。書きたいことを書いていったら自然と純文学になっちゃった、推理小説になっちゃったということは、絶対にない。純文学と大衆文学の選択も含め、作家はそういったタイプの小説を書こうと思わなければ書けない。むしろ、ある規範を決めて作品を書いた方が完成度は高くなる。一般論ですが、『ジャンル分けできない作品なんだよな~』という小説は、99.9パーセントが駄作で残りの0.1パーセントが傑作、かもしれない、ということになります。出版社が作家を推理、ホラー、純文学などにジャンル分けしたがるのには理由があるわけです。
で、先行作家からの影響に話を限ると、村上春樹的な小説の書き方は小松さんの世代で成熟したと思います。春樹さんの書き方はどこか翻訳調で、その生活的豊かさも含めたある種の余裕表現には、戦後文学に対するアンチテーゼという面が確実にあったと思います。しかし小松さんの作品にはそれがない。まあ生まれてからずっと、緩い不況社会を生きてきた世代ではあると思いますが、本質的に豊かさというものが身についている。ここからもう一歩どこに進むのか。それがこの世代の勝負だと思います。尊敬する先行作家はいてもいい。でも作家が進むべき正しい道は、師に会っては師を殺し親に会っては親を殺しの道です。またそれが先行作家に対する最大の敬意でもあります。
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