水野翼さんの文芸誌時評『No.014 S-Fマガジン 2016年10月号』をアップしましたぁ。『スター・トレック』50周年記念特集号です。水野さんは『『スター・トレック』にせよ『スター・ウォーズ』にせよ、それがなんとか現代に届く、その気になれば今でも続編をこしらえることができる、という点がレトロな過去コンテンツとは多少の、しかし決定的な違いをもたらす。(中略)つまり最初の器の大きさ、すなわち構えの規模によって、コンテンツの寿命というのはおおかた決まる、ということだ』と批評しておられます。
映画やドラマに限らず、小説でもシリーズモノは、安定した収益を供給側にもたらしてくれます。儲かりゃそれでいいのかといふ商業主義にもなりがちですが、儲からない、つまり創作物を社会に受け入れてもらえなひといふのも、作家にとっては非常なストレスです。理想を言えば一方で儲かる仕事をしながら、他方で儲からないけど、自分がこれは社会にとって絶対必要だと確信する仕事を残せるのが作家にとって一番いいことです。ただ儲かる仕事は社会からの要請が非常にきつい。次々作ることを求められますし、制約も多くなる。作家にそれをかいくぐって自分のしたい仕事をも成し遂げてゆく精神力がなければ、商業主義に飲み込まれてゆくだけでせうね。
水野さんは、『我々がひとつの作品世界として認めるのは、まず登場人物のアイデンティティだが、それによって保証されるのは思想の一貫性だ。何を是とし、何を否とするかの価値観が主人公と取り巻く人物たちの価値観として定まることになる。人物が変わるということは、作品を支える価値観が変わる可能性がある、というかたちで読者を脅かす。年代記を繋ぐのがしばしば親子であるのは、この不安を軽減する方途でもある』と批評しておられます。
世の中には、こりゃマイナーな支持しか得られないよなぁと思ってしまふ作家もたくさんいらっしゃいます。でもそういう作家には、少数でもコアな読者がじょじょについてゆくものです。いつまでもマイナーに甘んじている作家は、圧倒的に仕事量が足りないか、思想の一貫性といった強度が足りないことがほとんどです。売れる売れないを考える前に、作家はまず、自己が一貫して表現したい思想とはなにかを考えてみるべきでせうね。
■ 水野翼 文芸誌時評『No.014 S-Fマガジン 2016年10月号』 ■
■ 第04回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
第04回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■