星隆弘さんの連載演劇批評『現代演劇の見(せ)かた』『No.018 戯曲のうえに劇場を建てるために』をアップしましたぁ。豊島区立の劇場・あうるすぽっとで、今月9月7日から11日まで上演されるKawai Project演劇第二弾『間違いの喜劇』のレビューです。Kawai Projectはシェイクスピア学者でもある河合祥一郎先生主宰の劇団です。河合先生の新訳・演出で2014年4月にシェイクスピアの『から騒ぎ』を上演して旗揚げしました。今回は同じく河合先生新訳・演出によるシェイクスピア劇第二段です。
星さんは『間違いの喜劇』について、『本作もまたライム(韻)を残さず訳出している。そして、シェイクスピアの作劇した当時のように、なにもない簡素な舞台上に言葉によって劇世界が構築されていくものとなるのだろう。観客はつねに劇世界(登場人物)と現実の舞台(俳優)を同時に眼差すものだが、本作においては400年前の、シェイクスピアの「原文」というもうひとつの現実に触れることになる。戯曲と舞台と物語という三重の世界に目と耳を開く、おもしろくもいそがしい演劇体験となるにちがいない』と批評しておられます。専門の演出家とはまたひと味違う、シェイクスピアのテキスト原本と上演当時のオリジンを踏まえて新たな演劇を作り出す試みです。
石川は文学金魚の編集人をやるようになってから、小説だけでなく詩や演劇、美術についても、ささやかながら情報を仕入れるやうにしています。まーバカなことを言ってると思われるでせうが、一公演で1000人以上動員できる劇団はたくさんあります。それでも赤字かトントンで劇団運営は楽ぢゃありません。でも文学の世界では、詩だと俳句・短歌の結社主宰者さんとほんの一握りの詩人を除いて千部本を売るのはかなり難しい。小説の世界でも初版二千部、三千部はぜんぜん珍しくなひ。こりはちょっと考えてみるべき現象といふか、事実です。
もちろん演劇界は多様です。演劇界全体にお客さんが集まっているわけではなく、各劇団に固定ファンがいる。宝塚はもちろん、新劇、ミュージカル、アングラ、小劇場など、それぞれのジャンルのそれぞれの劇団に固定ファンが付いています。演劇好きと言っても、ヅカファンはまずアングラ観劇には行きません。つまり各劇団は一公演ずつが勝負であり、その都度面白い演劇を上演してファンを飽きさせなひように努力しています。
文学の世界は基本個人事業であり、演劇とは根本的に違うものです。しかし読者を飽きさせない努力は必要でせうね。飽きさせなひとは、読まなければならないといふ動機付けを読者に与えることでもあります。楽しさだけでは演劇などの芸術に敵わないです。また作家自身が読者をよーく考えてみる必要があるかもしれません。実売千部でコストを抑えれば、劇団と同じやうに、儲からないけど次の本(公演)を出す(上演する)ことができます。自分の売り方を編集者や出版社に丸投げして結果を出せるとは限りません。またエンタメが多様化した現代は、AKBのようにコアな少数のファンからメジャーと呼べるような結果に繋がる時代かもしれません。
Kawai Projectさんのやうに、シェイクスピア学者さんが劇団を主宰するケースはそんなに多くありません。演劇には座付き作家兼演出家、演出専門家、あるは俳優から演出家になった方の舞台など、さまざまなバリエーションがあります。Kawai Projectさんの舞台は新風になるでせうね。コアなファンが付くと思いますですぅ。
■ 星隆弘 連載演劇批評『現代演劇の見(せ)かた』『No.018 戯曲のうえに劇場を建てるために』 ■
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