山本俊則さんの美術展時評『No.045 日本国宝展』をアップしましたぁ。泣く子も黙る国宝の展覧会のレビューです。山本さんは『国宝を規定しているのは文化財保護法である。(中略)有形文化財の中から、特に国が指定して保存・公開すべき文化財が、文部科学大臣からまず重要文化財に指定される。重要文化財からさらに、「世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝」たるものが国宝になる。(中略)重要文化財に指定されるだけでも大変なことだが、国宝は重文の八パーセントしかない。いかに選りすぐられているのかがわかるだろう』と書いておられます。
重文・国宝は個人所有なら文部科学省の許可を得て売却することができるのですが、国宝の場合、最低1億からといふのが相場のやうです。ただこりは日本国内での値段らしひ。2008年にクリスティーズに運慶作の仏像が出品されましたが、12億5千万円の落札価格でした。日本古美術の優品は海外に持って行った方が高い値段で売れるわけですが、コレクターの方が海外流出を嫌うので、国内に留まる場合が多いと聞いたことがあります。
んで山本さんも書いておられますが、日本の古美術の最高峰は正倉院御物です。ただ『本来なら真っ先に一括国宝指定されるべきだが、宮内庁所管――つまり天皇陛下所有品であるため、重文・国宝指定の対象外にある』(山本さん)わけです。山本さんは、『その伝来の確かさと残されている文物の量から言っても、日本の古美術の最高峰は正倉院御物である。それが重文・国宝の指定を受けることなく、いわば空虚な中心となっているのは、実に日本らしい現象だと言えるかもしれない』とも書いておられます。面白い現象ですねぇ。
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