金井純さんのBOOKレビュー『絵のある本のはなし』『No.044 『伝説の谷―信州鬼無里の伝承』ふるさと草子刊行会(編集)』をアップしましたぁ。長野県の鬼無里村周辺に伝わる伝承を集めた本です。けっこう山深い村なのですが、昔から伝承話には事欠かない場所です。今は高速道路と鉄道が物流のためのインフラになりましたが、昔は街道と川が大事だったので、鬼無里も交通の要所としてそれなりに栄えていたんでせうね。
金井さんは、『物語が穢れであるとまでは思わないけれど、ようするに人が棲むところに必ず生じるものが伝承なのだろう。それが一切ないのは、人語を語らぬ動物しか暮らしてこなかった山中や砂漠に相違ない。人が足を踏み入れれば、その場所にまつわる出来事が生じ、それが語り伝えられる。その出来事が肥大化し、その土地そのものの定義とされるのが伝説・伝承だ』と書いておられます。物語の初源について考えさせられる考察です。詩であれ物語、口承であれ、人が来て作られた物語が土地のイメージを決めてゆくわけです。
金井さんはそれについて、『私たち人だけが、その土地の現在とは違うところを見ようとする。土地の伝承とはすなわち私たちの来し方である。(中略)伝説・伝承が常に超常的なものに触れるのは、そのためである。(中略)神代に連なる物語は、それを伝える私たちもまた神代に連なることを保証するのだ。(中略)そうならば、土地が私たちに為すことにはすべて意味がある。それは私たちが土地に為したことに対する呼応であるはずだ。土地の伝説・伝承とは、私たちと土地とのコミュニケーションの記録である』と書いておられます。じっくりお楽しみください。
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■ 金井純 BOOKレビュー 『絵のある本のはなし』『No.044 『伝説の谷―信州鬼無里の伝承』ふるさと草子刊行会(編集)』 ■