日本が誇る世界的特殊作家、三浦俊彦さんの連載小説『偏態パズル』(第74回)をアップしましたぁ。偏態危機一髪は継続中なのですが、今回は珍しく私小説的な内面描写です。
あ~あ。……
ほんとにもう、それ聞いたとき、思わず辞書で調べてしまいましたよ、「いちおう」を。
ひととおり。ひとわたり。大略。とりあえず。ひとまず。(中略)
しかしいちおうはないだろういちおうは。
「いちおうこれ」な学生証にはもちろん通学先の大学名が印刷されてる。
大学名名乗るとき必ずアタマに「いちおう」を付けるのが口癖になってる人種でもなかったはずなのにな。君は。
十分といえないが、最低限の条件は満たしている大学です、というわけだな。(中略)
「身分証明証見せてもらえますか?」
「十分といえませんが最低限の条件は満たしているこの大学です」
……。
殺すよ?
いくら世間知らずの君でもだな。
けっこうシビアな内面描写です。ある程度の社会的地位のある人が覗きとかで捕まると、こういふ内面になるんでせうね。でもこういう箇所に三浦センセの高い社会性がよく表れてるなぁ。ホントに世間知らずの人は、『いくら世間知らずの君でもだな』とは書けないのでありまふ(爆)。
んで今回の後半のフラグメンツは、『偏態パズル』の読者の皆様にはおなじみの、おろち譚であります。なんか緊張した回が続いたのでホッとしますね(爆)。あ、石川、おろち系の趣味はなひのですが、おろち学を含めて人間の快楽原理って、永遠の常同性にあると思ふのです。その常同的な至福感が何によって揺さぶられ、壊され、でも続いてゆくのかが、『偏態パズル』といふ前代未聞の小説作品の醍醐味かもしれませんですぅ。
■ 三浦俊彦 連載小説 『偏態パズル』(第74回) pdf版 ■
■ 三浦俊彦 連載小説 『偏態パズル』(第74回) テキスト版 ■