山際恭子さんのTVドラマ批評『No.092 美女と男子』をアップしましたぁ。NHKさんで毎週火曜日夜10時から放送されているドラマです。第三部に突入していますから人気ドラマですね。脚本は『江(ごう)』の田渕久美子さんで、主演は仲間由紀恵さんと町田啓太さんです。IT企業のキャリアウーマンの主人公が、社長が資本提携した傾きかけた芸能プロダクションへの出向を命じられ、新人発掘に悪戦苦闘する物語です。畑違いの業界への出向は、ちょっと高ビー(この言葉ちょっと古いかな)になっている主人公に、社会経験を積ませる社長の目論みなのでありました。
いわば主人公のビルディングス・ロマン(成長物語)なのですが、山際さんはビルディングス・ロマンの構造について考察しておられます。『ディケンズの『ディヴィット・コパフィールド』には・・・いつも下から窺うような目線でお世辞タラタラ、というのが登場する。上から目線は鼻っ柱をへし折ればいいから簡単なのだが、こういうのはたちが悪い。・・・成長物語とは教育的配慮も伴っているだろう、到達目標を定めたエンタテインメントであって、それを阻むものが構造的に “ 悪しきもの ” ということになる。・・・これは主人公の行く手を阻むものではなく、あくまで成長を阻むものである。主人公の敵役は、むしろ成長を促すライバルであり、“ 良きもの ” である。』とあります。
このやうな、善とも悪とも言えない、不可思議で不気味なところもある敵役は社会を象徴する存在です。男の子が主人公のビルディングス・ロマンでは、必ずと言っていいほど敵役との決定的衝突があります。それにより、敵役が小説の舞台から去っていくか、両者の間になんらかの和解が成立するのが常です。ただま、女性が主人公の場合は別の落としどころの方がすんなり物語が進むやうです。じっくりお楽しみください。
■ 山際恭子 TVドラマ批評 『No.092 美女と男子』 ■