山本俊則さんのBOOKレビュー『絵のある本のはなし』『No.036 『宇野亞喜良クロニクル』-宇野亞喜良イラストレーション&デザイン作品集-』をアップしましたぁ。今月1日にインタビューをアップした宇野亞喜良さんの画集の書評といふか、宇野亞喜良論です。山本さんは「作品を見て、「これはちょっと出来が悪いな」と思った記憶がほとんどない。宇野さんの作品はいつも一定レベル以上の〝商品〟として仕上がっている・・・宇野さんにはいわゆる習作時代がないのではないかと思っていた。『宇野亞喜良クロニクル』の初期作品を見るとやはりそうだ。図版掲載したのは宇野さん十五歳の時の作品である。画家にとっては不満の残る作品だろうが、すでに高い完成度を示している」と書いておられます。
山本さんまたは、「どんな作家でも長所と短所は紙一重である。多彩なテクニックを持ち妥協のない高い美意識で作品を完成させる宇野さんの絵は、広告・出版業界の人間にとってとても重宝だったろう。ただ抜群に上手い画家であるゆえに、宇野さんには絵に淫するところが、絵を描く快楽に没頭してしまうようなところがあったのではなかろうか。画風の上ではいくらでも変化できる宇野さんにとって、新たな技術の習得は大きな課題ではなかったろう。絵に魔術をかけること、精神的な深みを得ることの方が遙かに重要だったのではないかと思う」とも批評しておられます。
宇野さんは寺山修司について「他人の才能も自分の何かを語る技術として使える」人だったと回想されていますが、それは宇野さんも同じだといふのが山本さんのお考えです。山本さんは「優れたイラストは見る人を未知の世界に誘う。限られた時空間しか体験できない人間の心を、現実か空想かを問わず未知の広大な世界に解放してくれるのである。・・・突き詰めて言えばそれは、人を物語世界に誘う表象(アイコン)である。宇野さんは物語そのものを作ることはないが、彼の絵はそれぞれの物語に沿って変化し、時には物語自身が気づいていないヴィジョンを新たに付け加える」と書いておられます。じっくり読んでお楽しみください。
■ 山本俊則 BOOKレビュー 『絵のある本のはなし』『No.036 『宇野亞喜良クロニクル』-宇野亞喜良イラストレーション&デザイン作品集-』 ■