金井純さんのBOOKレビュー『絵のある本のはなし』『No.034 まあるいごはん こぐれひでこ著』をアップしましたぁ。こぐれひでこさんの料理本ですが、レストランの料理を再現したものではなく家庭料理のレシピです。料理の仕上がりイメージはイラストで表現されていますが、それにも意図があるやうです。
金井さんは、「イラストで示されたレシピは、ある世界観のようなものを与える瞬間がある気がする。そこにはまず世界から与えられたものとしての材料がある。そしてその再構成としての料理。その料理は再び、我々自身を再構成するための材料となる。だから料理に示される自意識、オリジナリティは最小限のものである。写真には細部まで写りすぎるから、自意識なりオリジナリティなりが写り込み、そうなるとそちらにウェイトが置かれることになる場合がある。イラストは写真よりは描き手の個性が出るものだけれど、それだけに対象と自我とがきれいに分かれるところがある」と書いておられます。
料理本はふんとに星の数ほど出版されています。中には著者のライフスタイルコミで料理を表現している本もあります。素敵なキッチンに食器、リビング、それに素敵な料理人(主婦)といったイメージですね。イラストで料理を表現すれば、ライフスタイル系の付加価値は消える代わりに、料理(素材の取り合わせ)自体の意味・意義が強調されるでせうね。
日本ではプロの料理人には男性が多く、実際に家庭で料理を作っているのは圧倒的に女性です。料理に対してちょっと異常なほどのこだわりを持つグルメも女性よりも男性の方が多いかな(爆)。文句が多い男の料理は無駄だらけです。主婦には許し難いでせうなぁ。良い悪いの問題ではなく、この現状は人間のメンタリティに影響を与えます。つまり文学の題材になり得る。文学金魚は総合文芸誌ですから、そういった捉え方をするわけです。
主婦が「今日はどんなご飯がいい?」と旦那や子供に聞き、「なんでもいい」と答えられて苛つく感覚は文学に活用できます。この感覚はPTAやお受験などで、家の中で主婦一人だけが追い詰められてゆく感覚とどこかでつながっている。そういった人間精神の、ささやかだけど決定的な機微を表現するのに料理はうってつけなのです。女性作家がしばしば料理を小説プロットの中心に据える由縁ですね。
■ 金井純 BOOKレビュー 『絵のある本のはなし』『No.034 まあるいごはん こぐれひでこ著』 ■