山際恭子さんのTVドラマ批評『No.077 ワカコ酒』をアップしましたぁ。原作は新久千映さんのマンガで、ドラマで主人公・村崎ワカコを演じるのは武田梨奈さんです。山際さんのレジュメでは、「テレビ東京の人気シリーズ「孤独のグルメ」の女の子版だ。「孤独のグルメ」は文字通り、天涯孤独な独身の中年男がひたすら飯を食うのに対し、こちらは26歳の一人暮らしの女の子が居酒屋で一人、晩酌を楽しむ。ただそれだけの場面、というのは共通している」といふことになります。
で、山際さんは「ワカコ酒」と「孤独のグルメ」を比較して論じておられます。「「孤独のグルメ」は人気シリーズになっただけのことはある、と今更ながら納得する。・・・ワカコちゃんは可愛らしいし、何を食べても、誰と顔を見合わせても、ニコニコしている。・・・「孤独のグルメ」の五郎のことは皆、ちょっぴり羨ましく、しかも五郎が過ごしている時間は、誰にも確かに既視感があるのだ。一方で、スマイルは人間関係の潤滑油にはなり得ても、食べ物のスパイスにはなり得ない、とわかる。実際、こんなに誰にでも笑いかけるワカコがなぜ独りで呑むことにこだわるのかは、あまり伝わってこない」と批評しておられます。確かにそうだなぁ。
食べること、飲むことは人間にとって基本的な快楽の一つです。しかしその〝楽しい〟といふ感情をドラマや小説でストレートに表現するのは意外に難しい。スパイスとして孤独や人間関係の軋みなどがあった方が、飲食といふささやかな快楽の重要さが際立つやうなところがあります。山際さんが、「そもそも飲み食いする姿だけで番組一本など、できるわけがない。その原則が崩れるとすれば、そこには本来あるまじきストイックな雰囲気、食べること以外の夾雑物を排する潔さがあってしかるべきだ。たかが日常の食物の映像で人の時間を潰そうというなら、多少なりとも覚悟がなければ観てはいられない」書いておられる通りでせうね。