小原眞紀子さんの連載評論 『文学とセクシュアリティ 第010回』 をアップしましたぁ。『源氏物語』 のクライマックス、『明石』 の巻についての評論です。光は明石に隠棲するわけですが、ここである種の 〝再生〟 を体験します。この巻において、日本文学において大変重要な隠棲・自然 (海)・再生の主題が鮮やかに現れています。漱石の 『門』 や志賀直哉の 『暗夜行路』 などにも通じる主題であります。
思えば非常によく出来た小説構造だと思います。光は男たちが形作る制度のほぼ中心にいる。単に権力に近いだけではない。ほとんど権力を意識しなくていいほど、権力そのものに近接した貴公子であるわけです。しかし彼の容姿は女性を思わせ、その色好みは女性心理に沿ったものです。物語の外殻は固く確立された制度であり、その内側はたおやかで柔らかい。『源氏』 読解では光の内面が強調されがちですが、外殻の強さ固さがなければそれは際立たないわけです。
今回小原さんは、『源氏』 の構造を映画タイタニックや、上野千鶴子さんの 『男流文学論』、蓮見重彦さんの言説などから読み解いておられます。そこには徹底して性差を人間精神のダイナミズムとして読み解こうとする姿勢があります。またその端的な表現として小説文学を想定しておられます。是非お読みいただければと思います。
■ 小原眞紀子 連載評論 『文学とセクシュアリティ 第010回』 ■