連載翻訳小説 e.e.カミングス著/星隆弘訳 『伽藍』(第06回)をアップしました。第2章『途上』です。まだ第6回と連載序盤ですが、少しずつクーマングスさんの小説の特徴がご理解いただけるようになったのではないかと思います。アメリカ文学といふことはさておき、クーマングスさんはプロパーの小説家ではありません。小説のセオリーを無視しているところがあるんですが、その分、別の特徴というか本質を捉えています。

 

今回は『鉛筆一本手に入れられずにいる自分に呪いの言葉を並べたり、我が独房独特の壁飾りを眺めたりしてだいぶ暇をつぶす』で始まりますが、彼の小説では本質描写が先に来る。そしてそこから溢れ出す思考や情念などが、意外な長さで展開してゆきます。この方法が現代的と言えば現代的でしょうね。

 

日本の典型的な小説では登場人物の顔や服や化粧を描写して、室内や風景をリアルに描写して、さて彼や彼女は何を考えたのか、誰に会い何が起こったのかを描写してゆきます。ちょいと乱暴な言い方ですが、この王道的小説作法は、手垢を通り超して金属疲労を起こし、ポキリと折れる寸前になっていると思います。よほど面白い小説展開なら別ですが、読者はそんな枚数稼ぎの小説に付き合ってくれるほどヒマぢゃない。特に純文学はそうです。

 

まず本質を書くこと。もちろんそう簡単に本質など書けるものぢゃございません。ただ現代小説では、とりあえずであろうと本質描写が先に来る必要があります。石川は諸手を挙げて村上春樹さんの小説が素晴らしいとは思わない読者の一人ですが、彼の小説が若い世代から強烈に支持されている理由はそこにあります。春樹さんの小説では、まず作家が書きたい本質(を示唆する言葉)が先に来る。そして思考と感情が溢れ出すわけです。

 

小説の世界は変わり始めています。旧型の船に乗っていっしょに沈んでゆくのか、新しい船に乗り新たな視点で世界に飛び出してゆくのかは作家次第です。ただ勇気と確信を持って新しい試みを世の中に提示してゆかなければ、ほんのちょっとであろうと世界は変えられないのです。

 

 

連載翻訳小説 e.e.カミングス著/星隆弘訳 『伽藍』(第06回) 縦書版 ■

 

連載翻訳小説 e.e.カミングス著/星隆弘訳 『伽藍』(第06回) 横書版 ■

 

 

第05金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項

第0回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。

 

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