山田隆道さんの連載小説『家を看取る日』(第14回)をアップしましたぁ。主人公の新一は家を継ぐと決心はしたものの、それが経済問題ともなり、家業を継ぐことにも重なってゆきます。妻の亜由美はその苦しさ、不自然さをつぶさに見ています。

 

 「……いや、俺は変わってへんよ」

 「え?」

 「変わったのは……状況や」

 その言葉が私の胸に深く突き刺さった。状況……頭の中でこだまする。(中略)

 咄嗟に出た言葉だった。新一は目を丸くしている。(中略)

 「けど、家はどうすんねん。それがあるから大阪に戻ってきたわけやん」

 「正直、私はそのへんがわかんないのよ。今どき長男だからって、家を継がなきゃいけないもんなの!? 仕事まで継がなきゃいけないもんなの!?」

 「もう、その手の話は散々してきたやろ!」新一の口調が荒くなった。「あの家のおかげで今の俺があるって、そういう感謝があるからやん。もちろん親に腹立つこともあるけど、それ以上の感謝があるから家を無視でけへんねんよ」

 「なんでそんなに優等生なのよ! 親と子供がちがう人生を歩むことなんか、今は普通のことじゃん! それと感謝は別問題だよ!」

(山田隆道『家を看取る日』)

 

「変わったのは……状況や」といふのは、辛く苦しい言葉ですねぇ。息子を私立学校に通わせるために、お父さんの新一は、好きな映像関係の仕事を減らしてでも家業の葬儀屋を継がなければならないわけです。それが親孝行につながるのは確かですが、一人の現代人の生き甲斐を奪うことになると妻の亜由美は感じています。ん~実に苦しい夫婦の会話ですねぇ。『家を看取る日』、石川が予想していたより遙かに深刻な局面に差しかかってまいりました。この家族、だいじょうぶなのかなぁ。続きが楽しみでありますぅ。

 

 

山田隆道 連載小説 『家を看取る日』(第14回) pdf版 ■

 

山田隆道 連載小説 『家を看取る日』(第14回) テキスト版 ■

 

 

 

■ 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)は3月31日〆切です ■

金魚屋では21世紀の文学界を担う新たな才能を求めています。

小説はもちろん短歌・俳句・自由詩などの詩のジャンル、あるいは文芸評論などで、思う存分、新たな世界観、文学観を表現したい意欲的作家の皆様の作品をお待ちしております。

応募要項_01_cover (500dpi)