大篠夏彦さんの文芸誌時評『No.023 文學界 2015年03月号』をアップしましたぁ。又吉直樹さんと一緒に第153回芥川賞を受賞された羽田圭介さんの『スクラップ・アンド・ビルド』を取り上げておられます。羽田さん、このところテレビに出ずっぱりですねぇ。何がなんでも文学者として社会で生き残ろうとしておられるところ、とても好感が持てます。ただもそっとテレビ的戦略をお考えになった方がベターかなぁ。ちょい前に野坂昭如さんがお亡くなりになりましたが、テレビに登場する時の彼はフツーの人ではありませんでした。羽田さんはフツーのお兄ちゃんに見えちゃうんだなぁ。それが辛い会社勤めなどをせず好きに書いて生きている作家――一般人のイメージはそうです――へのマスの幻想を煽るとはちょっと思えない。まあ文学者文学者した作家も嫌味ですけどね(爆)。

 

又吉さんの『火花』は今年一番売れた本のやうです。来年まで続くかどうかはわかりませんが、羽田さんを含め、最近では珍しく大きな社会的関心を呼んだ芥川賞受賞作品でした。大篠さんが書いておられましたが、芥川賞は基本、文藝春秋社「文學界」が新人作家に授与する新人賞です。けっして小説界全体がオーソライズした賞ではありません。もちろん過去に華々しい作家を輩出したという実績を考慮すれば、〝実質的に〟文学界全体の総意だとも捉えられるわけですが、ほんじゃあ「文学界」以外の文芸誌はどーなっちゃうのよといふことにもなりかねませんよね。でもま、ここのところもビミョーで、純文学作家を抱える「文学界」以外の文芸誌が、芥川賞を一つの目標にしているのは否めません。まー純文学作品を〝売ることができる〟のは文藝春秋社「文學界」だけなんだなぁ。

 

各文芸誌は戦後の一大出版ブームの恩恵をこうむったわけですが、純文学に関しては文藝春秋社「芥川賞」を超える社会的指標を作り得なかったわけです。ただ「新潮」は「文學界」的私小説に社会性を付加した文学風土を維持することで一定の安定を得ていますし、「すばる」は純文学と中間小説に活路を見出すという文学風土を持っています。でも「群像」や「文藝」は厳しいな。かなり迷走している気配です。現在の純文学系小説文芸誌を取り巻く状況を言えば、そういふことになると思います。今後さらなる文学不況が訪れるとしても、「文学界」と「新潮」「すばる」は生き残るだろうといふのが業界人の秘かな噂話でふぅ(爆)。

 

ただま、大きな変化にさらされているのは「文學界」なども同じでせうね。確かに『火花』はバカ売れし大きな社会的話題を呼びましたが、その背後で『ほんとうに日本文学を代表する賞なのか、作品なのか』といふ疑義のやうなものが湧き上がっているのも確かだと思います。東芝やSONY、シャープなどかつての一流企業が窮地に陥っていることからわかるように、どの業界でも安泰といふことはない。確固たる古い基盤を再生し得る者と新たな規範を確立できる者しか生き残れない気配があります。中途半端は辛い時代なのでありますぅ。

 

 

大篠夏彦 文芸誌時評 『No.023 文學界 2015年03月号』 ■