小原眞紀子さんの連載小説『はいから平家』(第09回)をアップしましたぁ。『はいから平家』、純文学作品なのですが、かなりユーモラスであります。

 

 

 「うおーっ、待っとくんなはいよっ」

 婆さんは大声をあげ、ふいに立ち上がると、裸足のまま、思わぬ速さで突進してきた。

 「こんな、こんままでは、申しわけんなかっ」

 婆さんは叫ぶと、手に持ったものを車の窓から投げ込みはじめた。

 「おうっ、やめとくんなはっ、」

 マサ祖母は両掌をかかげる。婆さんの投げつけるものはつぶてのようにフロントガラスに、洋彦の頭や座席の後ろに当たる。天井にぶつかり、み幸の膝に落ちてきたものは、セロファンに包まれた桃の形の駄菓子だった。

 「いけまっせん、こぎゃんこつな、お返しいたしますっ」

 後部座席に落ちた、煎餅やガム、饅頭やら歯ブラシやらを祖母は拾い集め、窓の外に押し返す。

 「どーかっ、どーか持ってってはいよっ、」と、婆さんは叫びながら、地面に落ちたものを拾ってはまた、次々と投げ入れてくる。

 「早くっ、もう、いかんっ、」

 マサ祖母は掌で顔を覆い、洋彦は大慌てで車を出す。

 後ろを振り返ると、遠ざかる婆さんは仁王立ちで、うおーっ、申しわけんなかっ、と怒鳴りつづけている。

 

こういふ光景って、日本人なら一度は見たことがあるかも(笑)。ただそこにちょっとし日常の狂気を含ませているところが、小原さんのうまいとこでありますぅ。

 

 

小原眞紀子 連載純文学小説 『はいから平家』(第09回) pdf版 ■

 

小原眞紀子 連載純文学小説 『はいから平家』(第09回) テキスト版 ■