鶴山裕司さんの連載エセー『続続・言葉と骨董』『第36回 スペインの陶器(前編)』をアップしましたぁ。「文化には緩急と呼べるようなサイクルがある。・・・数十年、時には数百年に渡って比較的安定した時代が続き、太平の夢を破るかのように突如として異民族や異教徒との衝突が起こるのである。・・・そういった場合、必ずと言っていいほど双方が相手側の影響を受ける。そんな文化的衝突の痕跡をたどるための第一級資料は、言うまでもなく文書である。しかしその手触りを伝えてくれるのは物である」と鶴山さんは書いておられます。

 

鶴山さんは今回、スペインの陶器を取り上げておられますが、異文化同士の衝突を2つの側面から考察しておられます。一つは言うまでもなく東洋との関わりです。マゼランは世界周航の途中、フィリピンのマクタン島での先住民との戦いで命を落としたわけですが、その後、スペインがフィリピン諸島を領有して植民地化しました。1565年のことです。江戸幕府の鎖国令まで日本とフィリピンは頻繁に交易しており、キリスト教の宣教師も多数来日していました。フィリピンを介して日本とスペインは交流していたわけです。

 

もう一つはスペイン本土での異文化との衝突・交流です。「七一一年にイスラーム勢力のウマイヤ朝がイベリア半島に侵入し、またたく間にカトリック国だった西ゴート王国を滅ぼして半島の大半を制圧した。・・・キリスト教徒がイスラーム教徒からイベリア半島を奪還する過程をレコンキスタ(再征服運動)と言う。・・・スペイン側の史書では、当初から存在したスペイン人の民族意識、キリスト教徒としての一貫した宗教的情熱がレコンキスタを成し遂げたのだということになる。しかし事はそれほど単純ではあるまい」と鶴山さんは書いておられます。

 

鶴山さんはまた、「ヨーロッパはパワー・オブ・バランスの大陸である。その鍵を握るのは、中世以降現在に至るまで中原の大国フランスとドイツである。・・・しかし大航海時代は・・・大国のフランスやドイツ、イギリスは出遅れた。ポルトガル、スペイン、オランダが大航海時代を主導した背景には、当時の精神的高揚を基盤にした国力の増大がある」とも書いておられます。スペインが大航海時代を主導したのはイスラームとの戦い、つまりレコンキスタによる国威高揚が元になっているわけです。

 

ISILなどの活動によって、イスラームは負の側面ばかりが強調されがちですが、鶴山さんはその文化がスペインに与えた影響を考察しておられます。なお今回は、ちょ~カッケー鳥籠の写真も掲載されています。小説家の島尾敏雄さんのご子息で、写真家の島尾伸三さんの旧蔵品ださうです。じっくりお楽しみください。

 

 

鶴山裕司 連載エセー『続続・言葉と骨董』『第36スペインの陶器(前編)』 ■