小松剛生さんの第1回 辻原登奨励小説賞受賞作『切れ端に書く』(第07回)をアップしましたぁ。物語も佳境に入ってきました。小松さんの『切れ端に書く』はプロットで進む小説ではないですが、ある種の切羽詰まった自己言及的なエクリチュールが、いっけん豊かで呑気で楽しげな世界の中で展開するのが大きな魅力だと思います。

 

 「ここでいう準備っていうのは心構えのことよ。どうする? ここで一生システムという名の巨人に従って生きていくか。それとも」

 巨人。

 なぜ彼女がそのことを知っているのか。

 それは僕の頭の中でだけの存在だったはずだ。

 「それとも?」

 

確かにわたしたちは、「それとも、それとも?」と自問しながら生きているのであります。物書きさんの場合は、これでいいのか、いいのかと自問しながら生きているわけですね。それなりにまとまった作品を一定期間内に書きあげることができるのは明らかな才能です。でもその先には本にまとめるという作業がある。本にまとめれば後戻りは利かず、ありとあらゆる批判(売れ部数も含めて)を黙って受けとめるしかありません。

 

でも「それとも、それとも?」と自問し続けている限り未来は明るいのかもしれません。自信を持つのは大事なことですが、物書きさんの場合、それは常に〝ほとんど裏付けのない自信〟であることに常に留意しなければならなひと思います。

 

 

小松剛生 連載小説『切れ端に書く』(第07回) pdf 版 ■

 

小松剛生 連載小説『切れ端に書く』(第07回) テキスト版 ■