高島秋穂さんの詩誌時評 『No.003 角川短歌 2012年09月号』 をアップしましたぁ。歌壇の超大物、佐佐木幸綱さんの特集を取り上げておられます。不肖・石川、編集者ですからなにごとにも表層一ミリの知識しか持っていないのですが、幸綱さんは素晴らしい歌人です。『さらば象さらば抹香鯨たち酔いて歌えど日は高きかも』 などとっても好きな短歌です。でっかい象と鯨が真っ昼間から酔っ払って高歌放吟してるわけですが、『さらば』 が効いていますねぇ。作家は雄壮で甘美ななにかに背中を向けているようです。
文学金魚では文芸誌と詩誌の時評を掲載していますが、これは文学金魚にとってはお米のような主食といいますか、作物を育てるための土壌のやうなものです。批判的コンテンツが掲載されることもありますが、決して各メディアさんと対立しやうとしているわけではありません。出版のアウトソースが紙媒体中心だということは今後も変わらないでしょうが、現在では発表・発信媒体にネットメディアが加わったわけです。しかしメットメディアはまだまだ未成熟です。ネットの特性を活かしながら独自のメディアに育て上げていかなければなりません。
紙媒体の雑誌では情報はクローズドです。ジャーナリズムの創出という雑誌本来の目的から言えばオープンでもいいわけです。問題は言うまでもなく収益構造です。ただ従来型の出版形態ではもはやかつてのような収益を確保できないことは、出版人のほぼ全員が痛感していることです。この苦境の打開方法はおおむね 2 つあります。一つはさらに情報を絞り込むこと。文学業界なら超売れっ子を完全に囲い込んでそこでしか読めないメディアを作り上げることです。もう一つは情報をオープンにして別の収益構造を模索することです。この場合、メディアと収益構造両方を新たに構築していくという困難が待ち受けています。
文学金魚は簡単に言えば後者のパイロットタイプとして自らを位置付けています。紙媒体のメディアさんたちがお互い鎬を削っておられるように、紙とネット媒体の間で相互を活性化させるという意味での良好な対比関係が生じるのは当然です。ネットメディアは紙メディアの情報的閉鎖性を相対化できる可能性を持っているということです。文学金魚の詩誌・文芸誌批評は半ば必然的な紙メディアの限界を指摘し緩和するためにあります。もちろん文学金魚の編集人としては、金魚メディアを飼育するのと同時に、新たな思考(指向)を持った著者を世に送り出して出版界全体を活性化できればいいなぁとも思っています。
■ 高島秋穂 詩誌時評 『No.003 角川短歌 2012年09月号』 ■