紫雲 新連載小説『クローンスクール』(第01回)をアップしましたぁ。今月から第14回金魚屋新人賞佳作の紫雲さん『クローンスクール』を連載します。佳作の理由は辻原登先生が選評で『作家がすでに実績を持つジャンルでの応募なので佳作となったが、例えばラノベ作家の純文学小説といったチャレンジングな試みなら新人賞受賞となったろう。経歴そのものは不問だが、「新人賞レベルではないので佳作」と言ったら妙に聞こえるだろうか』と書いておられる通りです。ただ中でも辻原先生は紫雲さんの作品に興味を示しておられました。辻原先生、中国語が堪能な中国通ですからね。
『クローンスクール』の舞台は中国です。民主派の両親に育てられた少女・宋(ソン)美雨(メイユー)は日本留学するはずでしたが、母親は空港には向かわず政府の秘密施設に彼女を車で連れてゆきます。そこには自分そっくりなクローン少女たちがいた。もちろん母だけでなく父親も彼女がクローンで、いずれ秘密施設クローンスクールに入校することを知っていた。
世界観がほぼ完璧に出来上がっています。ほとんどの小説はモデルがあってもぼやかすのが普通ですが、紫雲さんはハッキリ中国を舞台にしている。かなり取材なさったか実地の知識があるのだと思います。また主人公が少女というのもポイントです。男なら政治一辺倒になるでしょうが女性主人公ではそんなにストレートではない。政治より深い理由がクローンスクールにはある。
様々な伏線が散りばめられた小説の出だしです。政府の目的、両親の意図が不明なのはもちろんですが、スクール、いわゆる女子高ですから同一性の問題がある。ただでさえクローンで似通っている上に性別も同じ。アイデンティティの問題、自我意識の問題などが当然生じてくる。大きな構えから始まるサスペンス小説であり、かつ社会批判小説、自我意識問題小説でもある複雑な作品のスタートです。
■ 金魚屋の本 ■
■ 金魚屋 BOOK SHOP ■
■ 金魚屋 BOOK Café ■