寅間心閑連載小説『オトコは遅々として』(第05回)をアップしましたぁ。寅間さんの連載小説です。男にとっての妊娠と女性にとっての妊娠が、ぜんぜん重要性というか切迫感が違うのはまあ当然ですね。現代ではかなり安全になりましたが、出産は時に母胎の危機をともないます。肉体的にそれを負うことのない男はなにをどうしても呑気に見えてしまうでしょうね。
『オトコは遅々として』では主人公が元カノを妊娠させて堕胎させたという伏線が張られています。これが妻の妊娠に重なってくる。「自分の子であろうと他人の子であろうと、子どもを殺すことはきっと普通ではなくて、もちろん中絶だって同じだ。見逃してもらえるとは俺も思っていない。本当は見逃してほしいけど無理だ。「まだ産まれてもいない命って、そんなに大切なのかよ」という俺の主張は通らない。中絶だって人殺し、決して普通ではない」とあります。
女性作家で妊娠・出産、あるいは流産を主題に小説を書いた作家はかなりいます。実体験に重ね合っていれば私小説ということになりますが、小説は私小説であろうと原則フィクション。テーマによって多面的な人間存在を描き出すのが目的です。社会通念では倫理的に指弾されるような事柄が書いてあっても、それが作家が抱えるテーマのための設定なら小説としてはOKです。『オトコは遅々として』が倫理的なところに進むのかそうではないのかはまだわかりませんが、切実なテーマです。展開が楽しみでありますぅ。
■ 寅間心閑新連載小説『オトコは遅々として』(第05回)縦書版 ■
■ 寅間心閑新連載小説『オトコは遅々として』(第05回)横書版 ■
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