金魚屋から『文学とセクシュアリティ-現代に読む『源氏物語』』を好評発売中の、小原眞紀子さんの連載小説『No.014 本格的な女たち』をアップしましたぁ。同窓会サスペンス小説です。主人公の瑠璃はさらに追いつめられてゆきますね。しかもまったく犯罪とは関わっていないのに。でも現実に、自分が知らないうちに奇妙な噂を立てられていることなどはしばしばあります。そういうごく普通の怖さがこの小説ではうまく活用されています。
小原さんは『文学とセクシュアリティ』で〝小説の登場人物に人権はない〟と書いておられます。モデル小説でない限りそうですね。小説は人間とは何かを現実に即して明らかにする人文学的探求でもあります。〝人間とは何か〟を露わにするためには殺人が起ころうと一般社会では不道徳と言われる出来事が起ころうとOKです。それに対して怒ったり反発したりするのは読者の特権ですが、小説家は重々承知です。なんのためのフィクションか、ということです。
小説の場合フィクション=現実味のない空想ではありません。読者が気づかないほど緻密に現実世界を抽象化してその本質を描き出すのが小説のフィクションです。言いにくいですが、現実の手触りのない純文学的実験小説にほとんど秀作・傑作はないですね。安部公房の『砂の女』は実験小説と言えないことはないですが、パラレルワールドとしての現実世界が具体的肉感を持って描かれています。K・ディックのSF小説なども同じです。その意味でSFのF=フィクションを〝空想〟と訳すのは間違っています。
あ、今月1日に金魚屋新人賞を発表しましたが、金魚屋の新人賞は受賞者1人と決まっているわけではありません。優れた作品であれば5作でも10作でも受賞とします。書き忘れていたので補足しておきますぅ。
■ 小原眞紀子 連載小説『No.014 本格的な女たち』縦書版 ■
■ 小原眞紀子 連載小説『No.014 本格的な女たち』横書版 ■
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■ 第8回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
第08回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
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