遠藤徹さんの連載小説『ムネモシュネの地図』『第22回(九)象のお腹(パリンプセスト)(上編)』をアップしましたぁ。『ムネモシュネの地図』もいよいよ追い込みです。ということは謎解きです。でも単純な謎解きでは終わらないと思いますよぉ。なにせ遠藤さんですから。
作家の実生活とはまた別の話ですが、作品の登場人物の設定には作家の思想が反映されます。『ムネモシュネの地図』の種山先生とさやかクンは、特にさやかクンの方が反発し、時に嫌悪感を示したりもします。決して恋愛関係に陥らないことは明白ですね。その理由はある意味種山先生がすべてを見通している賢者だからです。ただ賢者だからといって、この世のすべての事柄を思い通りにできるわけではない。
確かに小説では種山先生は社会的地位もあり、お金には興味がありませんが実はリッチです。しかしだからこそ、先生にもどーにもならない謎が必要になります。この構造は遠藤先生の処女作『姉飼』から同じですね。『姉飼』は谷崎潤一郎の『痴人の愛』を彷彿とさせる作品ですが、高い知性と富と力を持つ者が姉に振り回される。その醍醐味が遠藤ワールドの大きな魅力です。
しかし遠藤さんは一方で、谷崎のように脱構築的な力に耽溺しない。底の方に冷たいなにかが流れている。それが遠藤さん独自の作品魅力につながっています。小説家らしい小説家ですねぇ。詩人は性急に天上に舞い上がりたがりますが、小説家は現世の底の底まで下って冷たい水に全身を浸して沈んでゆく。これもこの世を描きながらこの世のものではない一つの天上世界を求める文学作品のあり方です。
■ 遠藤徹 連載小説『ムネモシュネの地図』『第22回(九)象のお腹(パリンプセスト)(上編)』縦書版 ■
■ 遠藤徹 連載小説『ムネモシュネの地図』『第22回(九)象のお腹(パリンプセスト)(上編)』横書版 ■
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