連載翻訳小説 e.e.カミングズ著/星隆弘訳『伽藍』(第13回)をアップしましたぁ。カミングズさん、ヘトヘトになるまで歩かされ、憲兵詰め所のような所に連行されます。んでお偉いさんが出てきて『ところで何故ここまで来たんだ』と尋ねる。カミングスは一応、軍紀に反する罪で連行されているわけですが、ホントのところ、誰も彼に興味を持っていない。
血なまぐさい前線から後方支援部隊まで、軍隊は上意下達で粛々と動いているわけですが、命令の意味を正確に理解している者はほとんどいません。その中でカミングズは可能な限り人間らしい意志を発動させようとしている。フランス人に囲まれているので、『貴様はゥ–ァキューマングズだな?』とか言われたりするのですが、否定もしない。本当の名前を、本当のことを言っても仕方のない場所にいるのです。しかしその馬鹿馬鹿しさをじっと見つめ、抗っている。
『伽藍』はヘミングウェイ的な勝利の栄光を描いた小説と比較すれば、第一次世界大戦を裏側から見た作品です。アメリカ完全勝利の二次大戦後にはヘミングウェイ作品がよく読まれましたが、今はどうなんでしょうね。物質的繁栄の裏に流れる虚無を見つめたフィッツジェラルドや、カミングズの方が訴えかけるものが大きいように思います。文学者に社会の大きな流れを変える力はありませんが、何が起こっているかを正確に見つめておく必要があります。
朝鮮戦争以降、60年以上東アジアでは戦争が起こらなかったわけですが、完全無欠のノンポリの石川ですら、こりゃマジでヤバそうだぞぉという状況になっています。外交はパワー・オブ・バランスですが、それが崩れると内政的に国粋主義が勃興しやすい。国粋主義は排外主義です。つまり外交的危機を冷静に見つめる目が曇り、大国の介入を招きやすい。長い長い戦後の終わりが紛争にならなければいいですけどねぇ。
■ e.e.カミングズ著/星隆弘訳 連載翻訳小説『伽藍』(第13回)縦書版 ■
■ e.e.カミングズ著/星隆弘訳 連載翻訳小説『伽藍』(第13回)横書版 ■
■ 第05回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
第05回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■