秘密のケンミンSHOW
日本テレビ系列 毎週木曜 21時~
高視聴率が続く長寿番組で、しかもなお続きそうでもある。最初は47都道府県を網羅したら終了するしかないのではと思ったが。
実際、どうして今まで思いつかなかったろう、という企画ではあった。ご当地もので安定的なヒットを狙い、なおかつ他所の人々にもその土地のイメージを植え付け、観光に資するというようなのだったら、ずいぶん昔からあるノウハウだった。伊勢志摩グルメ温泉殺人事件しかり、皆さまの NHK の各番組しかり、津軽海峡冬景色しかり。
新しいポイントは恐らく「エブリ県民、カミングアウト!」という、司会みのもんたのコールにある。マスコミの中心地である東京のスタジオで、さまざまな芸能人たちが「田舎者」であることを誇らしげに「カミングアウト」するというコンセプトは、確かに今まであまりなかった。
そしてそうした芸能人たちは、そのとき取り立てて芸能人である必要はない。○○出身で東京で仕事をしている、ただの人だ。つまり、あなたであり、わたしでもある。
もう一つのポイントは、その土地が対外的に看板とし、売り出しているものでなく、その土地固有の思わぬものを見出す、というところにある。ちょっとした物の食べ方など、あまりに瑣末で、その土地の人々は他所でもやっていると思い込んでいることが多い。一方でよそ者は、たまたまその家特有の、奇妙なやり方だと思うだろう。
日常的かつ瑣末な異和ほど人に違和感を起こさせ、侮蔑の念に至ることすらある。この番組はそこを捉え、さじ加減で対立させたり、相互理解に至らせたりする。「東京では、そんなことしないんですよ」「えーっ、ウソぉ」というお決まりのパターンを経て、「ではスタジオで、食べてみましょう」「うーん、勘弁してよ…うまいっ」。
まあ、テレビなんだと言えばそれまでだが、自分が知らないことを拒絶し、侮蔑したがる愚かしさからすれば、ずっとマシだし啓蒙的だ。
夫の実家に帰省した際、旅館で出されるような味付け海苔をお握りに巻けと強要され、舅と姑の味覚センスと非常識、さらには人格を疑ったという話を聞いた。香り高くぱりっと炙った焼き海苔を、手にベタつかないよう巻いて食べるのが「お握り」ではないのか、と。
番組によると、お握りに巻く海苔は、鈴鹿山脈を境に東西で焼き海苔と味付け海苔に分かれるという。その麓にある亀山市 (「これが世界の亀山モデル」の) では、その双方が混在するらしい。コンビニなど全国展開するチェーン店は、こんな事情も考慮しなくてはなるまい。
こういったことを現象に留めさせず、もしその原因、源へと遡ってゆくのなら、現代版のテレビ民俗学になろうか。というか、番組がさらなる長寿となってゆくとすると、いつか時間軸へと踏み込んでゆくときがくるだろう。いかにそれをポップにやってのけるかが、テレビの正念場だ。
山際恭子
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■